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1000試合以上に出場してきたベテラン4人が初めてポストシーズンの舞台に立ち、残るは1人に

宇根夏樹ベースボール・ライター
アダム・リンド(ミルウォーキー・ブルワーズ)Sep 2, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

メジャーデビューした年にポストシーズン出場を果たす選手がいる一方で、メジャーリーグで長年プレーしてもポストシーズンには縁のなかった選手もいる。レギュラーシーズンで2000試合以上に出場しながら、ポストシーズンの試合に出ることなくキャリアを終えた選手は、シカゴ・カブス一筋だったアーニー・バンクス(2528試合)を筆頭に14人を数え、そこには、監督として4度のワールドシリーズ優勝を経験したジョー・トーリ(2209試合)も含まれている。

現役選手では、今シーズン開幕前の時点で3人が、ポストシーズン未経験のまま、出場1000試合を超えていた。カンザスシティ・ロイヤルズのアレックス・リオスに、トロント・ブルージェイズのホゼ・バティスタエドウィン・エンカーナシオンだ。そう、彼らのいる両チームは現在、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ(リーグ優勝決定シリーズ)で対戦している。3人はレギュラーシーズンの出場試合を増やし、リオスは1691試合、バティスタは1403試合、エンカーナシオンは1353試合とした後、ディビジョン・シリーズ(地区シリーズ)で初めてポストシーズンの試合に出場した。

また、チェイス・ヘッドリー(ニューヨーク・ヤンキース)も、レギュラーシーズンの1122試合を経て、ポストシーズンに辿り着いた。ヤンキースはワイルドカード・ゲームの1試合で姿を消したが、それでもヘッドリーは試合に出場した。昨年のアダム・ダンのように、チームがワイルドカード・ゲームで敗れ、試合に出場せずにポストシーズンを終えることはなかった。ダンは直後に引退を表明。レギュラーシーズンでは2001試合に出場したが、ポストシーズンは0試合という記録が残った。

ヘッドリーは1試合しか出場できず、リオスら3人はワールドチャンピオンをめざしてプレーしている最中なので、タイミングとしては適切ではない気もするが、まずは4人のポストシーズン初出場を祝いたい。3人のうち少なくとも1人は、この先のワールドシリーズにも出場する。ア・リーグ・チャンピオンシップ・シリーズは2試合が終わった時点で、ロイヤルズが2勝0敗とリードしている。

そうなると、ポストシーズン出場ゼロでレギュラーシーズンの試合に最も多く出ている現役選手は誰なのか? 1102試合に出場しているアダム・リンド(ミルウォーキー・ブルワーズ)だ。リオスら4人のポストシーズン初出場により、開幕前の5位から一気にトップに立った。また、開幕前にリンドのすぐ下、6~8位にいたウィル・ベナブル(テキサス・レンジャーズ)、ダニエル・マーフィー(ニューヨーク・メッツ)、スターリン・カストロ(カブス)の3人も、ポストシーズン初出場を果たした。言い換えれば、開幕前の上位8人中、ポストシーズンに辿り着けなかったのはリンドだけだった。現時点で2位のマイク・アビールズ(クリーブランド・インディアンス)とリンドとの差は、292試合も開いている。

リンドは2004年のドラフトでブルージェイズから3巡目・全体83位指名を受け、昨年11月にブルワーズへトレードされるまで、球団一筋に過ごしてきた。交換相手のマルコ・エストラーダはブルージェイズで好投したので、リンドも間接的にブルージェイズの地区優勝に貢献した見ることもできるが、リンドとしては、そう聞かされてもうれしくないだろう。また、今年の夏には、セントルイス・カーディナルスがリンドを獲得するという噂が出たものの、実現には至らなかった。カーディナルスはリンドではなく、同じ左打者ながら一塁だけでなく外野も守れるブランドン・モスをインディアンスから獲得した。カーディナルスは両リーグ最多の100勝を挙げ、ポストシーズンに進出した。

現在、リンドは32歳。今シーズンは149試合で20本塁打を放ち、出塁率.360を記録した。左投手を苦手とするものの、故障さえしなければ今シーズンと同水準の成績を残す力を持っている。来シーズンの契約は球団オプションで、年俸800万ドルとそう高くなく、ブルワーズはこれを行使して残留させるだろう。ポストシーズン初出場は他のチームに移った方が近づきそうだが、ブルワーズがペナントレースから早々に脱落した場合でも希望はある。リンドが前半戦に再び好成績を収めれば、今度はオプションなしのFAが目前なので、今夏より交換条件が悪くてもブルワーズは放出に踏み切るはずだ。

ポストシーズンに登板したことのない投手では、ケーシー・ジャンセン(ワシントン・ナショナルズ)ら3人が、レギュラーシーズンで400試合以上に投げている。ジャンセンもリンドと同じく、2004年のドラフトでブルージェイズから指名され、昨シーズン終了後にFAとなるまでずっと所属していた。また、先発300登板以上でポストシーズン未経験の投手は、アーロン・ハラング(フィラデルフィア・フィリーズ)とフェリックス・ヘルナンデス(シアトル・マリナーズ)がいる。今秋は、レギュラーシーズン420登板のトニー・シップ(ヒューストン・アストロズ)と先発240登板のR.A.ディッキー(ブルージェイズ)が、ポストシーズン登板なしのストリークに終止符を打った。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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