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イチローが500盗塁に達した試合で惜しくも達成されなかった快挙には「たられば」を口にせずにいられない

宇根夏樹ベースボール・ライター
アダム・コンリー(マイアミ・マーリンズ)Apr 7, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

4月29日、イチロー(マイアミ・マーリンズ)が初回に二盗を決め、通算500盗塁に到達した。実はこの試合では、快挙がもう一つ、達成寸前までいった。

マーリンズはミルウォーキー・ブルワーズを相手に、ノーヒッターを達成しようとしていた。8回2死にアダム・コンリーが被安打ゼロのままマウンドを降りた後、2番手のホゼ・ウレイニャもヒットを許さずに2アウトを奪った。残すはあと2アウト。ダグアウトからはコンリーが見つめていた。

しかし、次の打者が放った打球は、ふらふらと右方向へ上がり、それを追いかけてダイブした二塁手のグラブの少し先に落ちた。2014年9月にフィラデルフィア・フィリーズの4投手が達成して以来となる、継投ノーヒッターはここで途切れた。

二塁を守っていたのは、レギュラーのディー・ゴードンではなく、控えのデレク・ディートリックだった。レギュラーに休養を与えるためではない。ゴードンは薬物検査で陽性反応を示し、この日から80試合の出場停止を科されていた。

スピードスターのゴードンは、昨シーズン、盗塁王と首位打者を獲得したのに加え、守備では二塁手リーグ・ベストのDRS(守備防御点)+13とUZR(アルティメット・ゾーン・レイティング)+6.4を記録し、キャリア初のゴールドグラブも手にした(UZRは800イニング以上)。ゴードンが出場停止になるのが1日遅く、いつものように二塁を守っていれば……。そう思わせるヒットだった。

その後、マーリンズは2死から3点を返されたものの、6対3で勝利を収めた。ただ、ゴードンは7月下旬まで出場できず、その穴は非常に大きい。ノーヒッターだけならともかく、マーリンズがポストシーズンを逃す要因にもなりかねない。これからあと何度、ゴードンがいたなら、という場面があるのだろうか。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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