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メジャーリーグを代表する若きスーパースターが、2020年の東京オリンピック出場を希望

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブライス・ハーパー(ワシントン・ナショナルズ)Apr 17, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

ワシントン・ナショナルズのブライス・ハーパーは、2020年の東京オリンピックに出場したいと思っている。ベースボールの五輪復帰が決まった直後、インスタグラムでその意志を明らかにした。

ハーパーがチームUSAに加われば、アメリカでの注目度は一気に上がる。昨シーズンは満票でMVPに選ばれただけではない。ハーパーのプレーは、自ら提唱する「Make Baseball Fun Again(ベースボールに楽しさを再び)」を体現している。年齢も申し分なく、4年後は27歳だ。

ただ、現時点では、メジャーリーガーがオリンピックに参加する可能性は低い。また、状況が変わったとしても、ハーパーと契約しているメジャーリーグのチームが、彼を参加させないかもしれない。レギュラーシーズン中に主力選手が抜ければ、チームの戦力は低下する。オリンピックの期間はレギュラーシーズンを中断した場合でも、故障のリスクは残る。

このままいくと、ハーパーは2018年のシーズン終了後にFAとなり、超大型の契約を手にする。ジャンカルロ・スタントン(マイアミ・マーリンズ)の13年3億2500万ドルを上回っても不思議はない。それだけの大枚を投じた選手が、メジャーリーグ以外の試合に出て故障すれば、チームとしては大きな損失だ。

もし、ハーパーがオリンピック出場を真剣に考えているのなら、新たな契約には、それを許可する旨の条項を付けるべきだろう。そうすれば、メジャーリーグの方向性がどうであれ、ハーパーはオリンピックに出場できるのではないか。最後にベースボールが行われた2008年の北京オリンピックでは、メジャーリーグの25人ロースターに入っている選手が除外された。2020年も同じだとすると、ハーパーは代表メンバーを選出する時点で、25人ロースターから外れればいい。

FAになったハーパーと契約するチームとして、噂されているのはニューヨーク・ヤンキースだ。もともと資金があることは言うまでもないが、アレックス・ロドリゲス(10年2億7500万ドル)、マーク・テシェーラ(8年1億8000万ドル)、CC・サバシア(5年1億2200万ドル)などの契約が満了することで、ヤンキースにはさらに余裕が生まれる。

ハーパーにとっても、ヤンキースなら望むところだろう。16歳の時、ハーパーはスポーツ・イラストレイテッド誌の表紙を飾った。そこに掲載されたトム・バードゥッチの記事には、こう書いてある。――ベースボール・プレーヤーとしてのゴールを訊かれ、彼は答えた。「殿堂入りさ、もちろん。ヤンキー・スタジアムでプレーしたい。ピンストライプを着てプレーしたい。史上最も偉大なベースボール・プレーヤーだと認められたい。待ちきれないね」

また、2010年のドラフトでナショナルズから全体1位指名を受けたハーパーは、入団会見でライアン・ジマーマンから背番号「34」のユニフォームを渡された。ハーパーはその時、背番号の理由について「ずっとミッキー・マントルが好きだった。3と4を足すと7になる」と語った。

メジャーリーグでピンストライプと言えば、ヤンキースがホームで着るユニフォームのことだ。マントルはピンストライプを着てプレーし、彼の背番号「7」は永久欠番になっている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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