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2020年の東京五輪にメジャーリーガーは出場しなくても、そこには未来のスーパースターがいる(はず)

宇根夏樹ベースボール・ライター
北京五輪の3位決定戦でUSAが日本に勝利 AUGUST 23, 2008(写真:青木紘二/アフロスポーツ)

オリンピックで最後にベースボールが行われたのは、2008年のことだ。そこに出場したのは、メジャーリーグ各チームの25人ロースターに入っていない選手だった。2020年の東京オリンピックでも、そうなる可能性は――少なくとも現時点においては――かなり高いと思われる。

だが、チームUSAのメンバーとして2008年の北京オリンピックに参加した24人のうち、スティーブン・ストラスバーグ(ワシントン・ナショナルズ)、デクスター・ファウラー(シカゴ・カブス)、ジェイク・アリエタ(カブス)の3人は、今年のオールスター・ゲームに選ばれた。ファウラーとアリエタは初めての選出だったが、ストラスバーグは2012年に続く2度目だ。他にも、トレバー・ケイヒル(カブス)が、オークランド・アスレティックスで投げていた2010年に選ばれている。

2008年のオリンピック当時から、ストラスバーグは逸材として知られていた。チームUSAのメンバーに、アマチュアの選手はサンディエゴ州立大の彼しかいなかった。ストラスバーグは翌年のドラフトで全体1位指名を受け、その1年後にメジャーデビューした。以降は、故障こそ少なくないものの、マウンドに立てば、エースと呼ぶのにふさわしい投球を続けている。

ファウラーのドラフト指名は2004年の14巡目・全体410位ながら、これは大学へ進む選択肢もあったためだ。コロラド・ロッキーズがファウラーに与えた92万5000ドルの契約金は、14巡目指名の史上最高額だった。ファウラーはオリンピックの翌月にメジャーデビューし、翌年からレギュラーとしてセンターを守っている。

アリエタは2007年に、ボルティモア・オリオールズから5巡目・全体159位で指名された。この年のドラフトでテキサス・クリスチャン大からプロ入りした5人のうち、アリエタの指名順位は3番目、投手に限っても2番目だった。花開いたのもやや遅く、メジャーデビューから4シーズン続けて防御率4.60以上に終わった後、2014年にスラッター(スライダー/カッター)とも形容されるカッターを習得して防御率2.53を記録し、昨シーズンは防御率1.77でサイ・ヤング賞に輝いた。

アリエタの例が示すように、オリンピックに出場してからメジャーリーグで活躍するまでに、時間がかかる選手もいる。ちなみに、24人のうち、メジャーリーガーになれなかったのは2人しかいなかった。メジャーデビューの時期は、オリンピックを挟んで11人ずつ。今シーズンは、オールスター・ゲームに選ばれたことのある4人以外にも、ケビン・ジェプセン(タンパベイ・レイズ)とブライアン・ダンシング(オリオールズ)の2人が、メジャーリーグの試合に出場している。ブレット・アンダーソン(ロサンゼルス・ドジャース)は開幕から故障者リストに入っているが、7月下旬からマイナーリーグでリハビリ登板をしており、9月には復帰できそうだ。

また、マイク・ヘスマンはオリンピックの時点ですでに30歳になっており、メジャーリーガーとしては大成できなかったが、マイナーリーグ史上最多の433本塁打を放った。ちなみに、メジャーリーグの通算本塁打は14本(オリンピック出場後は6本)。2011年はオリックス・バファローズで6本塁打を打った。ヘスマンは今シーズンから、コネティカット・タイガース(デトロイト・タイガース傘下のA-)で打撃コーチを務めている。

なお、日本プロ野球を経験した選手は、ヘスマンの他にも3人いる。ブライアン・バーデンは2011年、ネイト・シアーホルツは2015年に広島東洋カープでプレーし、ブランドン・ナイトはオリンピックに出場する前に、福岡ダイエー・ホークス(2003~04年)と北海道日本ハム・ファイターズ(2005年)で投げた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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