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代打満塁本塁打のヒーローがワールドシリーズではロースター外に!? 若きスラッガーが復帰に向けて始動

宇根夏樹ベースボール・ライター
M.モンテロの後ろで両手を上げているのはD.ファウラー Oct 15, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

シカゴ・カブスは71年ぶりのリーグ優勝に続き、108年ぶりのワールドチャンピオンをめざす。来たるワールドシリーズには、ロースターのメンバーを入れ替えて臨む可能性が出てきた。

ポストシーズンのロースター25人は、シリーズごとにセットできる。カブスはリーグ・チャンピオンシップ・シリーズで、ディビジョン・シリーズのロースターに入っていた控え内野手のトミー・ラステラを外し、代わってリリーフ左腕のロブ・ゼストリズニーを加えた。

ちなみに、この投手についてコメントする際、ジョー・マッドン監督は「ロブZ(ロブ・ジー)」と呼んでいた。綴りが「Zastryzny」と難しく、読みにくいことも理由にありそうだ。大学時代のニックネームは「フライデー」。ロビンソン・クルーソーとは関係なく、1年生の時、毎週金曜日に登板していたからだという。

この入れ替えは、シリーズの長さに起因する。最長5試合から7試合となるのに伴い、カブスはリリーフ投手を1人増やした。カブスと対戦したロサンゼルス・ドジャースも、同様の入れ替えを行った。

ワールドシリーズは最長7試合なので、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズと変わらない。それでも、ロースターの入れ替えがあるかもしれないのは、カイル・シュワーバーが復帰できそうなのだ。

シュワーバーは開幕3戦目にレフトを守っていて、センターのデクスター・ファウラーと交錯し、左膝の前十字靭帯と外側側副靱帯を損傷した。数日後に手術を受け、シュワーバーはマイナーリーグの試合にも出ることなく、レギュラーシーズンを終えた。ポストシーズン最初の2シリーズは、ロースターに入ることなく過ごした。

だが、カブスがリーグ優勝を決めた日、シュワーバーはアリゾナ・フォール・リーグの試合に出場した。MLB.comのキャリー・マスカットらの記事によると、シュワーバーはダグアウトにiPadを持ち込んでカブスの試合をフォローし、アリゾナ・フォール・リーグのチームメイトから祝福のシャンパンを浴びせられた。

この試合に、シュワーバーはDHとして出ており、守備にはつかなかった。ただ、ワールドシリーズ第1~2戦(と第6~7戦)はクリーブランド・インディアンスの本拠地で行われ、DH制が採用される。

昨シーズン、シュワーバーはメジャーリーグ1年目にして16本塁打を放った。規定打席よりかなり少なかったとはいえ、14.5打数に1本塁打のペースは、チームメイトのアンソニー・リゾークリス・ブライアントを凌ぎ、わずかながらリーグ3位のノーラン・アレナード(コロラド・ロッキーズ)を上回る。さらに、シュワーバーはポストシーズンの9試合で、3試合連続を含む5本塁打を叩き込み、カブスの球団通算記録を塗り替えた。

シュワーバーをロースターに加える場合は、誰かを外す必要がある。可能性が高いのは、外野手のホルヘ・ソレーアか捕手のミゲル・モンテロだろう。ソレーアはシュワーバーに勝るとも劣らぬパワーヒッターだが、このポストシーズンでは8打数0安打と鳴りを潜めている。

もっとも、シュワーバーが左打者であるのに対し、ソレーアは右打者だ。一方、モンテロはシュワーバーと同じ左打席に立つ。リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ第1戦では、同点の8回裏に代打グランドスラム(写真)を放ったものの、シュワーバーほどのパワーはなく、捕手にはウィルソン・コントレラスデビッド・ロスがいる。

また、シュワーバーはこれまで捕手と外野手を務めてきたので、コントレラスとロスが相次いで負傷した際には、膝の状態に不安が残るとはいえ、マスクをかぶることもできるはずだ。シカゴのスポーツ・ラジオ局670 The Scoreによると、マッドン監督はハビア・バイエズをエマージェンシー・キャッチャーとして考えているようだが、バイエズはマイナーリーグでも捕手の経験はない。

ヒーローになった10日後に、モンテロはロースターから外されてしまうのだろうか。ワールドシリーズは10月25日に始まる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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