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WBCでは異なる国の代表チームでプレーできる。パナマ代表として2度出場の左腕が、今回は中国代表に

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブルース・チェン March 7, 2009(写真:ロイター/アフロ)

2006年と2009年のWBCで、ブルース・チェンはそれぞれ1試合ずつ、先発マウンドに上がった。どちらの試合でも、チェンは母国パナマのユニフォームを着ていた。けれども、今回は違う。中国の選手として、自身3度目のWBCに臨む。チェンの祖父母は、中国からパナマに移住した。

2013年のWBCでも、チェンは中国代表入りを望んでいた。今回と同じく、パナマは予選で敗退した(チェンはいずれの予選にも参加していない)。ただ、2013年は出場資格を整えることができず、代表入りは果たせなかった。

2015年5月に引退するまでに、チェンはメジャーリーグの11球団で計400試合に投げた。先発227登板と1532.0イニングは、パナマ生まれの選手では最も多い。39歳の元メジャーリーガーとはいえ、中国にとって、チェンの存在はプラスとなるはずだ。今回のロースターにマイナーリーガーはいるものの、メジャーリーグでプレーした経験を持つ選手は、チェン以外にいない。

もっとも、異なる国からWBCに出場するのは、チェンが初めてではない。

アレックス・ロドリゲスは2006年にアメリカ代表チームでプレーし、2009年はドミニカ共和国のロースターに名前を連ね、練習にも参加したものの、故障に見舞われて出場を見送った。だが、ポール・ラトガーズは2006年にオーストラリア、2009年は南アフリカ共和国の選手として、両年ともWBCに出場した。

予選を含めれば、2ヵ国の代表チームでプレーした選手は他にもいる。例えば、ジョニー・デーモンがそうだ。2006年はロドリゲスとともにアメリカ代表チームでプレーし、2012年の予選にはタイの選手として出場した。

なお、アメリカからもドミニカ共和国からも参加を望まれていたデリン・ベタンセス(ニューヨーク・ヤンキース)は、昨年11月にニューヨーク・ポストのジョージ・A・キング3世が報じたとおり、ドミニカ共和国のロースターに入った。アメリカとドミニカ共和国は1次ラウンドで同じプールCにいるが、ベタンセスはそこでは登板しない。彼は2次ラウンド以降に出場可能な、予備登録の投手だ。しかし、両国が2次ラウンドや決勝ラウンドへ進み、ベタンセスが誰かと入れ替わってアクティブとなれば、アメリカを相手に投げる可能性は出てくる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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