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WBCならではの選手交代!? 負傷した正捕手の代わりに、ブルペン捕手がロースター入り

宇根夏樹ベースボール・ライター
左からT.クリッパード、A.ラローシュ、J.フローレス AUG 21, 2012(写真:ロイター/アフロ)

ベネズエラのロースターには、サルバドール・ぺレス(カンザスシティ・ロイヤルズ)とロビンソン・チリーノス(テキサス・レンジャーズ)の捕手2人がいた。ところが、サルバドールは2試合目に負傷し、離脱を余儀なくされた(その経緯は「WBCのアクシデント。メジャーリーグでは同じチームにいる正捕手と控え捕手が本塁で衝突し、正捕手が負傷」に書いた)。

チームに捕手が1人だけというわけにはいかない。ビクター・マルティネス(デトロイト・タイガース)はもともと捕手だが、現在はDHとしてプレーする。過去2年はまったくマスクをかぶっておらず、ごくたまに一塁を守るだけだ。

昨年12月にベネズエラが発表した予備ロースターの50人には、サルバドール、ウィルソン・コントレラス(シカゴ・カブス)、サンディ・リオン(ボストン・レッドソックス)、カルロス・ぺレス(ロサンゼルス・エンジェルス)の捕手4人がいた(チリーノスの名前はなかった)。

他にも、フランシスコ・セベーリ(ピッツバーグ・パイレーツ)はイタリア代表としてWBCに参加したものの、昨シーズン、捕手としてメジャーリーグの試合に出場したベネズエランは10人を上回る。ウィルソン・ラモス(タンパベイ・レイズ)はワシントン・ナショナルズで正捕手を務めた。オールスター・ゲームに選ばれ、22本塁打を放ってシルバースラッガーを受賞した点は、サルバドールと共通する。サルバドールはゴールドグラブも受賞したが、打撃成績はラモスが上だった。ミゲル・モンテロ(カブス)とディオナー・ナバーロも、60試合以上でスタメンマスクをかぶった。

だが、ロースター入りしたのは彼らではなく、ブルペン捕手としてチームに帯同していたヘスス・フローレスだった。

もっとも、フローレスもメジャーリーガーとしてのキャリアはあり、2007~09年と2011~12年に計263試合でマスクをかぶった。2年前の夏にマイアミ・マーリンズから解雇され、その後はメジャーリーグの球団と契約していないが、まだ選手生活にピリオドは打っておらず、この冬は母国のウィンター・リーグでプレーした。2月にメキシコで開催されたカリビアン・シリーズにも出場し、最初の打席でホームランを放った。

サルバドールの負傷後は、チリーノスがマスクをかぶり続けている。今後も、フローレスの出番は、あったとしてもごくわずかだろう。だが、思わぬ形でロースター入りしたWBCでも、カリビアン・シリーズに続き、ベネズエラを勝利に導く働きをするかもしれない。ちなみに、フローレスは過去3度のWBCには出場していない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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