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WBCのタイブレイク。幕開けとなる延長11回表の先頭打者は、日本だけでなく他の国も送りバント

宇根夏樹ベースボール・ライター
鈴木誠也 MARCH 12, 2017(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

今回のWBCでは、40試合中7試合が延長戦となり、そのうち3試合は延長10回が終わっても同点のまま、タイブレイクに突入した。1次ラウンドのドミニカ共和国対コロンビア、2次ラウンドの日本対オランダ、準決勝のオランダ対プエルトリコがそうだ。

タイブレイク開始の延長11回表に攻撃したチームは、ドミニカ共和国、日本、オランダのいずれも、送りバント(犠牲バント)で走者を進め、1死二、三塁とした。その直後、守っていた3チームのうちコロンビアとプエルトリコは、敬遠四球で1死満塁とした。

ベースボール・プロスペクタスによると、昨シーズンのメジャーリーグにおける得点期待値(Run Expectancy/その状況からイニング終了までの平均得点)は、無死一、二塁が1.4614点、1死二、三塁が1.3168点、1死満塁は1.5694点だった。シーズンを遡っても、ほぼ同様の数値を示している。

このデータを見る限り、攻撃チームは送りバントで得点期待値を減らし、守備チームは敬遠四球で相手の得点期待値を増やしたことになる。

だが、これらの得点期待値の変動は、そう大きなものではない。それに対し、攻撃チームは送りバントで二、三塁とすれば、内野ゴロによる併殺の可能性はほぼなくなり、シングルヒット1本で2得点もあり得る。守備チームは敬遠四球で満塁にすることにより、併殺に仕留める機会を再び作り出せる。併殺にならずとも、本塁を含むすべての塁でフォースアウトにできる。

無死一、二塁から始まるタイブレイクにおいて、表のイニングは、2点を巡る攻防だ。先攻チームは2点リードすれば、その裏にあらかじめセットされた走者2人の生還を許しても、負けにはならない。一方、後攻チームは1点ビハインドなら、送りバント&スクイズバントや送りバント&犠牲フライなど、ノーヒットでも同点に追いつき、こちらも負けはしない。実際はサヨナラ勝ちとなる2得点を狙い、送りバントに続いてスクイズバントはしない(打ちにいった結果としての犠牲フライはある)と思うが、あくまでも理論上の話だ。

今後も、送りバントとそれに続く敬遠四球は、表のイニングのスタンダードであり続けるだろう(裏のイニングは、その時点の点差によって異なる)。

延長11回表、ドミニカ共和国は1死満塁からシングルヒットで2点を入れ、さらにそこから5点を追加した。日本も1死二、三塁からシングルヒットで2点を挙げた。オランダは1死満塁から4-6-3の併殺打で無得点に終わった。

その裏、コロンビアは塁上の2人を還しても追いつけないため、送りバントでアウトを増やすことを避け、2三振と三塁ゴロに倒れた。オランダは送りバントで1死二、三塁としてまずは2得点(同点)を狙う手もあったが、打者のバント技術と日本の守備力を考慮したのか、そうはせず、一塁フライ(インフィールド・フライ)、三塁ゴロ(二塁フォースアウト)、捕手フライに討ち取られた。プエルトリコは送りバントと敬遠四球で1死満塁となった後、犠牲フライでサヨナラ勝ちを収めた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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