『おかあさんがおかあさんになった日』:お母さんに優しい国になるために・良い子育てのために
■長野ヒデ子作『おかあさんがおかあさんになった日』
絵本『おかあさんがおかあさんになった日』。病院での、出産の日の出来事が描かれます。おかあさんが、自分の子どもに、あなたが生まれた日の出来事、おかあさんがおかあさんになった日の出来事を語る形で、物語は進みます。
特に事件が起きるわけではありません。怪獣も妖精も出てきません。どの家庭にも、どのお母さんにも起きた、出産の一日の出来事が語られます。
みんなに望まれて、あなたが生まれた。みんながあなたの誕生を喜んだ。出産の産みの苦しみはあるけれど、おかあさんはあなたのおかあさんになれてとても幸せだと、絵本のお母さんは語ります。
■「お母さんに優しい国」:みんなが愛に包まれて
お母さんも、お父さんも、生まれてきた赤ちゃんも、先に生まれたお兄ちゃんも、みんなが愛で包まれ、感動と喜びで包まれます。なんてすてきな出産なのでしょう。
5月第2日曜日は母の日。国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」による「お母さんに優しい国」ランキング調査によれば、日本は179カ国のなかで32位だったそうです。
お母さんを幸せにすることが、子どもの幸せにつながるでしょう。どの子どもも、お母さんの不幸を喜んだりはしません。子どもは、お母さんの笑顔が大好きです。
お母さんへの優しさとは、母が守られ、子どもが守られ、家族が守られ、お母さんの外での仕事も守られること、お母さんの人生が輝けるようにすることでしょう。
そうして、みんなの愛で包まれながら、一人一人の子どもが生まれてくることができる国が、お母さんに優しい国です。
日本は、母子の健康や命はとても守られているのですが、女性議員の少なさなどにより「お母さんに優しい国」の順位が下がりました。職場で「マタハラ」が起きるような国は、お母さんに優しい国とは言えないでしょう。お母さんになることと議員になることの二者択一が迫られるような国は、お母さんに優しい国ではないでしょう。
「あなたのために私の人生を犠牲にした」などと母に言われて嬉しい子どもはいません。
■「おかあさんありがとう」の心
主婦の仕事は、なかなか感謝されません。当たり前だと思われます。外で仕事をして遅く帰って来れば、「遅くまでお疲れ様」ではなくて、「遅い!おなかすいた!」と子どもに文句を言われることもあるかもしれません。
仕事で悩み、子どもは言うことを聞かず、夫とも悩みを共感できないとすれば、心は疲れ果てます。お母さんになれた喜びを、忘れてしまうかもしれません。
子どもは、本来おかあさんが大好きです。「おかあさんありがとう」と思える子どもは、幸せな子どもです。普段はなかなか恥ずかしくて言えないかもしれませんが、母の日や誕生日など、チャンスはいろいろあります。
周囲がちょっと手伝ってあげて、「おかあさんありがとう」を心と形で伝える。そうすると、おかあさんも母になれた喜びを思い出す。みんながハッピーになれそうです。
すべての人は、お母さんから生まれてきます。母親に優しく、おかあさんがお母さんになれた喜びを感じられる社会が、私たちみんなとっても良い社会なのだと思います。
☆長野ヒデ子・さく『おかあさんがおかあさんになった日』童心社
(同じ作者による続編で『おとうさんがおとうさんになった日』もあります。)