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不眠不休で働いている皆さんへ:休むのも仕事です:熊本地震

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
(写真はイメージ)(写真:アフロ)

■不眠不休のボランティアたち

新潟県中越地震が発生した時。ある避難所の開設直後、阪神淡大震災で避難所のリーダーだった方が来てくれました。仕事が忙しく、夜中に自走車を走らせて、駆けつけてくれました。

そして、中越の避難所リーダーに避難所運営の注意点を熱く語り、またすぐに車に乗って帰って行きました。中越地震の被災者にとって、どれほどありがたいことだったでしょう。

私がお会いした避難所リーダーの方は、ちょうどカップ麺を食べようとしていたところでした。私は、どうぞ食べながらで結構ですと何度もお願いしたのですが、彼はカップ麺を脇に退け、私に熱心に話してくれました。大学の教員であり、新潟ローカル放送のテレビやラジオに出ている私に、伝えたいことがたくさんあったのです。

このような素晴らしい人たちによって、被災地は支えられます。しかし、ご飯も満足に食べず行う不眠不休の活動は、長くは続けられません。

■休むのも仕事

不眠不休の災害ボランティアたちも、さすがに一週間もすると疲れ果ててきました。ところが、自衛隊は元気です。一体彼らはどれほど体を鍛えているのだろうと思ったのですが、実は自衛隊はきちんと休んでいたのです。

自衛隊の活動は、過酷です。被災者のために炊いた温かなご飯も食べず、熱いお風呂も入らず、彼らは活動します。しかし、彼らには任務を全うする責任があります。

この先、被災地に何が起こるかわかりません。長期の活動もあります。いざという時に活躍できなければ、困ります。無理な活動をして二次被害を出せば、救助者を助けられませんし、地元の人はさらに苦しみます。

だから自衛隊は、明日も明後日も元気に働けるように、きちんと休養をとるのです。

それはプロ野球のピッチャーが、登板後に肩を休めるようなものでしょう。試合後なのに無理に肩を使っていれば、球団から怒られます。次の試合のために肩を休めるのも、仕事のうちなのです。

■災害の緊急時・ボランティアの苦しみ

人命救助や遺体捜索は、過酷な作業です。ですから、自衛隊や海上保安庁の隊員の心身を守り、二次被害を出さないためのマニュアルがあります。ただ東日本大震災は、あまりにも被害が甚大であり、マニュアルに従えないことも多くありました。屈強な隊員たちの心身も、疲れ果てました。

彼らの働きによって、助かった人も多いでしょう。慰められて人も多いでしょう。しかし、これは極めて例外的です。本来は、プロだからこそ体調管理が求められます。

ボランティアの場合は、心や体が疲れたら休めます。解雇されることなどありません。しかし同時に、ボランティア活動には、際限がありません。

プロは、早番や遅番があり、管轄区域があります。他の時間や他の場所は、他のプロに任せます。しかし、ボランティアは違います。ここで活動していても、あちらのことが気になります。8時間労働といった概念もありません。

ボランティア活動は、強制はないのですが、どこまでいっても終わりもありません。だから、自分自身の健康や安全を考えて際限を作ったり、休んだりすることに、罪悪感を持つ人もいるのです。

しかし、長期のボランティアの場合は、自分の活動を抑えることも大切なことでしょう。休むことは、自己中心的なことではなく、ボランティアの大切な活動の一つなのです。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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