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自宅のTVでDAZNのJリーグ中継を視聴してみた!(追記あり)

宇都宮徹壱写真家・ノンフィクションライター
1月22日に行われた、2017JリーグDAZNニューイヤーカップの中継映像。

■タブレット端末で見るのは問題ないが

2017年のJリーグは「DAZN(ダ・ゾーン)元年」。昨年は「10年間で2100億円の放映権料」という景気の良い話ばかりが聞こえていたが、われわれサッカー消費者も新しいシーズン開幕に向けて「DAZN元年」に備えなければならない。DAZNの中継は、インターネットのストリーミングサービス。「放送」から「通信」への転換は、まさにパラダイムシフトそのものである。これまでのように、自宅にアンテナを取り付けて、リモコンでスイッチを入れればすぐに見られる、というわけではなくなるので、のんびりした消費者には注意が必要だ。

DAZNの配信は、iPhoneやAndroidなどのタブレット端末、あるいはPCなどで視聴するぶんには「まったく問題ない」というのが私の周囲での一致した評価である。とはいえ、タブレットでサッカー中継を愉しむ層は、まだまだ一般的とは言い難いのが実情。スカパー!からDAZNに変わっても、やはり自宅のTVで観戦したいファンのほうが多数派であろう。実際、私の個人メディア『宇都宮徹壱ウェブマガジン』で、DAZNのTV視聴の実験座談会を行ったところ、想定をはるかに超える反響があった。

そこで今回は、この実験座談会での体験を踏まえて、自宅のTVでDAZNの中継映像を実際に視聴してみることにした。使用するTVは、パナソニックの地上・BS・110度CSデジタルハイビジョンプラズマテレビ(TH-50PX70P)。9年前に購入したもので、現在は生産中止となっている。自宅の回線はソフトバンク光で、Wi-Fiも完備。以上の環境で、1月22日に沖縄で開催された、2017JリーグDAZNニューイヤーカップの中継(ジェフユナイテッド千葉対FC琉球)を視聴してみることにした。

■DAZNをTV画面で視聴するために

amazonで購入したFire TV Stick。リモコン込みで4980円。
amazonで購入したFire TV Stick。リモコン込みで4980円。

まず、TVで視聴するのに欠かせないのがFire TV Stick、もしくはAmazon Fire TV(参照)。前者が4980円、後者が1万1980円。当然、Amazon Fire TVのほうが上位機種なのだが、「通常5〜7週間以内に発送」と書かれてあったので、今回はFire TV Stickを購入することにした。ちなみにFire TV StickやAmazon Fire TVは、一部家電量販店で取り扱っているという話もあるが、確実に購入するのであればやはりamazonがお勧め。なおDAZNを見るためには、amazonプライム会員(年会費3900円)に入る必要がある(参照)

次にDAZNへの入会。まず、こちらのサイトにアクセスして、氏名、メールアドレスを入力してパスワードを設定する。そして、支払い方法とカードの番号を打ち込めば、すぐに登録が完了。なおDAZNでは、1カ月の無料体験期間を設けており、入会から1カ月を超えると月額1750円+税の利用料金が発生する(それ以前に退会することも、もちろん可能)。ここで注意したいのが、入会にはクレジットカード、もしくはデビットカードが必要であること。これらのカードを持っていない人は、残念ながらこの段階で門前払いということになる。

Fire TV Stickを入手してDAZNに入会できれば、その後の流れはさほど難しくはない。Fire TV StickをTVの裏側にあるHDMI端子に差し込み、同梱してあるUSBコードを電源アダプターに接続してコンセントにつなぐ。続いてTVの電源を入れて、適切なHDMI入力を選択すれば、Fire TV Stickが起動。画面上の指示に従いながら、自宅のWi-Fiのパスワードを入力すると、amazonプライム会員向けのコンテンツ一覧が表示される。そして、いくつかあるアプリの中からDAZNを選んでダウンロード。登録してあるメールアドレスとパスワードを入力して、晴れてDAZNの中継映像を視聴することが可能となる。

■DAZNをTVで愉しむための6つの条件

Fire TV Stickによる画質はこんな感じ。もう少し解像度が欲しかった。
Fire TV Stickによる画質はこんな感じ。もう少し解像度が欲しかった。

自宅のTVで視聴したDAZNの画像は、正直なところ画質は今ひとつ。色がにじんでいてエッジもシャープさが欠けていた。ただし、上位機種のAmazon Fire TVであれば、処理能力が高まって画質も向上するようだ。加えて、映像がフリーズしたり落ちたりすることはなかったし、動きも以前の実験と比べてさほどカクカクしていない。よって現時点では、100点満点で65点くらいは出してよいだろう。むしろ画質以上に評価したいのは、意外と簡単に視聴できたこと。もっとも、以下の6つの条件を事前にクリアしていたことは留意すべきだ。

(1)光通信とWi-Fiを完備していたこと。

(2)amazonプライム会員だったこと。

(3)クレジットカードを持っていたこと。

(4)PCもしくはタブレット端末を持っていたこと。

(5)必要最低限のITスキルがあったこと。

(6)「わかっている人」からレクチャーを受けていたこと。

まず(1)は、DAZNを視聴するための前提条件(ただしAmzon Fire TVは有線LANにも対応)。(2)については、Fire TV Stickを迅速に入手できたので助かった(もちろん普通のアカウントがあれば十分)。そして(3)と(4)は、DAZNに入会する際には欠かせない。また(5)があっても(6)がなければ、もう少し手間取っていた可能性はある。

■サッカー消費者へのしわ寄せは本末転倒

DAZNでの視聴は、高齢者と若者には思わぬハードルがあることは留意すべき。
DAZNでの視聴は、高齢者と若者には思わぬハードルがあることは留意すべき。

幸いにして私の場合、上記した6つの条件を満たしていたので、ほとんど苦労することなくDAZNで中継映像を見ることができた。だが、ネット通販をまったく利用しない人はamazonのアカウントを作るところから、自宅が光通信ではない人は業者に電話するところから、それぞれ始めなければならない。また、クレジットカードやデビットカードを持っていない若者もいるだろうし(私もフリーになりたての頃はそうだった)、PCやタブレット端末とは無縁の高齢者も普通にいる(そうした人たちに、最低限のITスキルを期待するのも酷な話である)。

Jリーグの観戦者の平均年齢が、年々高くなっているのは周知のとおり(15年の調査では41・1歳)。ファンの高齢化が進む中、「え、電話工事しないとアウェーの試合が見られないの?」と戸惑うお年寄りが全国津々浦々で発生する可能性は十分に考えられよう。また、旧態依然とした通信環境で暮らしていて、クレジットカードを持ったことのない若者もDAZN難民の予備軍だ。ITスキルに乏しい高齢者と、収入の少ない若者。彼らが真っ先に脱落してしまうことを、私は非常に懸念している。

念のため申し上げると、私は決してDAZNを敵視しているわけではない。むしろ莫大な放映権をもたらしてくれたことには恩義を感じているし、この大型契約の締結に尽力した村井満Jリーグチェアマンにも感謝している。しかしながらJリーグが潤う代償として、サッカー消費者にしわ寄せが来るのであれば、それは本末転倒であると言わざるを得ない。Jリーグには「推奨するDAZNの視聴方法」を、IT弱者にもわかりやすく発信することを切に求めたい。新シーズンが始まって、あちこちで混乱が起こる前に。

【追記】twitter上に『DAZN ダ・ゾーン ヘルプ』というアカウントがあり、DAZN視聴に関する情報発信だけでなく、ユーザーからの質問にも積極的に回答している。入会を検討されている方は、この機会にフォローすることをお勧めする。

【訂正】amazonのカスタマーサービスに確認したところ、「プライム会員にならなくてもDAZNのアカウトがあれば視聴は可能」との回答をいただきましたので、本文を一部修正させていただきました。

写真家・ノンフィクションライター

東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。『フットボールの犬』(同)で第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞、『サッカーおくのほそ道』(カンゼン)で2016サッカー本大賞を受賞。2016年より宇都宮徹壱ウェブマガジン(WM)を配信中。このほど新著『異端のチェアマン 村井満、Jリーグ再建の真実』(集英社インターナショナル)を上梓。お仕事の依頼はこちら。http://www.targma.jp/tetsumaga/work/

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