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フィリピン地震から5ヶ月、ボホール島の現状 -自分事と捉えるべき防災減災について

矢萩邦彦アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授
トゥンゴッド村、海沿いの家屋。倒壊していなくても満潮時は浸水してしまう。

2013年10月15日9時13分頃、フィリピン南部ボホール島でマグニチュード7.2の地震が発生しました。この震災でボホール島やセブ島などで200人以上が死亡、フィリピン最古の教会であるセブ島のサントニーニョ教会やサンペドロ要塞の一部が倒壊しました。日本からも支援に乗り出す団体がありましたが、その直後にレイテ島をはじめ台風の被害が深刻になり地震での被災への注目は減ってしまいました。

崩壊した埠頭付近。
崩壊した埠頭付近。

◆ボホール島の被害

地震により38棟が全壊する被害に遭ったボホール島のトゥンゴッド村では、現在でも再建の目処が立たず村民は厳しい生活を強いられています。政府からの支援も最低限の食料のみで、家屋に対する問題は棚上げされたままだといいます。村民は1000人ほど、多くは漁業を営んでいましたが、漁を再開出来ない家庭がほとんどです。地震で埠頭が崩壊したため、満潮時は低地の家に浸水が続いている状況だといいます。

また直後の台風の被害ではレイテ島の発電所が止まってしまい、レイテからの電気に頼っていたトゥンゴッド村ではダウン症だった乳児の呼吸器が止まり、亡くなってしまうという事故も起きました。

親戚が集まり協力して生活をしている。
親戚が集まり協力して生活をしている。

◆防災減災のために

現在もトゥンゴッド村の支援活動を続ける早稲田大学の学生団体“Lapulapu”の瀬川奈央さんは、震災前に立てられていた家の多くが専門的な知識や技術がないまま建てられた“ノンエンジニアードハウス”であったことが被害を大きくしたのではないか、と指摘します。そのため、同団体ではクラウドファンディングを利用して資金を集め(※1)、竹を使用した耐震性のある家屋の建築や、村民が建築の専門知識を身につけられるワークショップなどを企画しているといいます。

東日本大震災においても「情報や備えがあれば助かったかも知れない人たちが居ると思うと悔しい」と“桜ライン311”の副代表佐藤一男さんは語ってくれました。被災による知識や技術をシェアすることによって今後起きる災害による被害を少しでも減らすことが必要だと感じます。

“Lapulapu”はまず10軒の耐震家屋建築を目指す。
“Lapulapu”はまず10軒の耐震家屋建築を目指す。

◆被災を自分事にすると言うこと

瀬川さんは、東日本大震災の時には海外に出ており、また被災地で生活した経験もないことからなかなか自分事とは思えなかったが、1年間留学をしていたフィリピンで、元々あったもの、知っていたものがなくなってしまったことを目の当たりにして衝撃を受けたと言います。

何に対してリアルを感じ、また自分と関係があると感じることが出来るかは個人差がありますが、少しずつその境界線を広げていくことで、より多くのことを自分事として捉えることが出来るようになるのではないかと思います。いつどこで災害が起こるかを正確に予測することは今のところ不可能です。だとすれば、防災や減災問題は全ての人にとって自分事だと言えるのではないでしょうか。(矢萩邦彦/studio AFTERMODE)

(※1)フィリピンの地震で被災した村の家屋を地震に強い家に修復したい

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アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授

1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場でパラレルキャリア×プレイングマネージャとしてのキャリアを積み、1つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を探究するアルスコンビネーター。2万人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした学習塾『知窓学舎』を運営。主宰する『教養の未来研究所』では企業や学校と連携し、これからの時代を豊かに生きるための「リベラルアーツ」と「日常と非日常の再編集」をテーマに、住まい・学校職場環境・サードプレイス・旅のトータルデザインに取り組んでいる。近著『正解のない教室』(朝日新聞出版)◆ご依頼はこちらまで:yahagi@aftermode.com

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