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求められる知識と倫理観、『不動産流通実務検定(通称“SCORE”)』始まる

矢萩邦彦アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授
青山学院大学陸上部を駅伝優勝に導いたゲスト原晋監督と超満員の会場。

2020年の東京オリンピック開催決定を契機に、多くの業界が転機を迎えようとしています。その一つが不動産業界です。実力が見えにくいという不動産業界の問題を解決し、サービス向上を目指す新たな試み、不動産流通実務検定(通称“SCORE”)が6月より実施されます。4月23日に開催されたオープニングイベントを取材しました。

◆不動産流通におけるTOEICを目指す

不動産流通推進センターの浅野間一夫副理事長は、この検定について「不動産流通におけるTOEIC」を目指している、と説明します。合格不合格で判定するタイプの試験では、一度合格したら学習が止まってしまう可能性があります。TOEIC型のようなスコアーによって評価される検定システムは、モチベーションを持ち続けるために効果が期待できます。不動産業界はプロフェッショナルかどうかが見えにくいといわれてきましたが、得点がそのまま「分かりやすい人事評価」や「業界外での評価」に繋がり、業界全体の業績アップも期待されます。

◆リアルな事例で“使える”問題を

システム担当の田寺智子さんは「“SCORE”は問題が命、と覚悟して作っている」といいます。不動産業界に関わらずですが、現場では全く同じ問題は起こりません。地域・時代によって変化する問題に、臨機応変に対応出来るように、「“SCORE”は、毎年センターに寄せられる4000件もの相談を踏まえ、実に最新でリアルな内容の試験問題を作成している」といいます。

もう一つ“SCORE”の際だった特徴として、オンライ受検があげられます。個人や会社の予定に合わせて受検出来、受検期間終了後には、科目別正答率やすべての問題の解説をウェブサイトにて確認出来ます。

◆求められる知識と倫理観

広報担当の勝見知恵子さんは、「これからの不動産業界は、知識と倫理観によってお客様に喜んで頂ける力が必要」だといいます。

オープニングイベントで特別講演をした元国土交通省河川局長で『日本史の謎は「地形」で解ける』の著者、竹村公太郎さんは、「地形と気象で説明する」という視点が、不動産業界で活動する際の誠意だといいます。また、「人間こそが情報の塊だ」という梅棹忠夫氏の言葉を引き、学び続けることで色々な人とコミュニケーションをとれるようになることが教養人として大事だといいます。その地域のお年寄りと話すことで、土地のことが見えてくるといいます。

「不動産業界の方には、平安時代まで遡れとは言いま せんが、江戸時代はつい最近ですから、江戸時代にその土地がど ういう場所にあったかは知っておいてほしいと思います。それは 土地を扱う方の最低限のマナーじゃないかな。もしそれが危険 なところなら言わなければいけないし、土地を扱う人の道徳じゃ ないかと思います」。

不動産業界全体の知識や専門性だけでなく、倫理観やマナーの底上げも期待される“SCORE”。受付期間は、5月1日(金)〜5月31日(日)まで。(矢萩邦彦/studio AFTERMODE)

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公益財団法人不動産流通推進センター

アルスコンビネーター/知窓学舎塾長/多摩大学大学院客員教授

1995年より教育・アート・ジャーナリズムの現場でパラレルキャリア×プレイングマネージャとしてのキャリアを積み、1つの専門分野では得にくい視点と技術の越境統合を探究するアルスコンビネーター。2万人を超える直接指導経験を活かし「受験×探究」をコンセプトにした学習塾『知窓学舎』を運営。主宰する『教養の未来研究所』では企業や学校と連携し、これからの時代を豊かに生きるための「リベラルアーツ」と「日常と非日常の再編集」をテーマに、住まい・学校職場環境・サードプレイス・旅のトータルデザインに取り組んでいる。近著『正解のない教室』(朝日新聞出版)◆ご依頼はこちらまで:yahagi@aftermode.com

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