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菅野完氏「ジャーナリストと名乗ったことない」 一部報道に苦言

楊井人文弁護士
日本テレビ「news every.」2017年3月15日放送より

森友学園問題を追及している菅野完氏が、一部メディアに「ジャーナリスト」との肩書きで報道されていることについて、自分から「ジャーナリスト」と名乗ったことはないと苦言を呈している。インターネット上では菅野氏が「ジャーナリスト」と称しているかのような誤解が広がっているが、菅野氏は日本報道検証機構の取材に、自らは「著述家」と名乗っており、専門的な訓練を受けていないため「ジャーナリスト」と名乗る資格はないとの考えを示した。

菅野完氏のツイッター投稿(2017年3月17日)
菅野完氏のツイッター投稿(2017年3月17日)

菅野氏は「日本会議の研究」などの著書があり、自らの取材で得た情報をツイッターで発信するなどの活動を行っているが、名刺には「著述家」とのみ記載。これまでもツイッター上で、自分は「ジャーナリスト」ではないと繰り返し表明していた(2016年7月3日同年11月3日2017年1月15日など)。にもかかわらず「ジャーナリスト」と報じられ、松井一郎大阪府知事から「自称ジャーナリスト」と揶揄される状況も生んでいる。

菅野氏は当機構の取材に対し、総務省の「職業分類」に従って「著述家」という呼称を用いていると説明した。同省ホームページによれば、「著述家」は「詩歌・戯曲・小説などの文芸作品の創作の仕事に従事するもの及び文学・学術などに関する著作・翻訳の仕事に従事するもの」と定義され、政治評論家や文芸評論家、エッセイスト、小説家などが例示されている(分類コード211)。

菅野完氏の名刺(承諾を得て掲載)
菅野完氏の名刺(承諾を得て掲載)

「ジャーナリスト」という項目はないが、「記者、編集者」という項目があり「新聞・雑誌などの記事の取材・執筆の仕事に従事するもの及び新聞・書籍・雑誌などを刊行するための資料を一定の目的の下に収集し、配列・整理するなどの仕事に従事するもの」と定義されている(分類コード212)。「ジャーナリスト」は辞書上、「ジャーナリズムに関係をもつ人。新聞・雑誌などの編集者・記者など」と定義されている

また、菅野氏は、「ジャーナリスト」ではなく「著述家」と名乗る理由について「本来、ジャーナリストとは、専門的な教育と訓練を受けた人間が名乗るべき肩書きだと思っています。僕はその訓練を受けていないので、ジャーナリストと名乗る資格はありません。しかし、僕は文章を書いてご飯を食べています。時には講演もします。それが僕の今の生業です。したがって、職業分類通り『著述家』と名乗らざるを得ないと思っています」とコメントした。

一部メディアでは「ノンフィクション作家」または「作家」といった肩書きも使われているが、これについては「会社によって表現基準が違うのだから、報道機関によって表現が変わるのは仕方がないことだと思っています」と述べ、許容範囲であるとの認識を示した。

菅野氏は3月15日、森友学園の籠池泰典氏=記者会見で理事長退任を表明=と東京都内で面会後、記者らの囲み取材に応じた。その模様を民放各局がニュース番組で放送。フジテレビと日本テレビは菅野氏を「ジャーナリスト」と表示する一方、NHKは「ノンフィクション作家」、TBSは「ノンフィクションライター」、テレビ朝日は「作家」と表現していた。

毎日新聞、東京(中日)新聞も3月14日付記事で菅野氏を「フリージャーナリスト」と表記していた。朝日新聞も当初「フリージャーナリスト」と記載したが、14日以降は「ノンフィクション作家」に修正している。

過去には「著述家」表記の新聞記事も

メディアには独自の用語基準があり、一部の表現が使えない場合があることは事実。だが、データベースで過去の新聞記事を検索すると「著述家」との表現を用いた例は多数ある。菅野氏についても「著述家」と表記した例があり、使用できないわけではないとみられる(毎日新聞2017年2月27日付産経新聞2016年5月10日付など)。

弁護士

慶應義塾大学総合政策学部卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHooを運営(〜2019年)。2017年、ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年、共著『ファクトチェックとは何か』出版(尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー)。2023年、Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。

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