「自主性」・「主体性」を持つための2つのポイント
上司が部下に期待する「自主性」「主体性」
私はクライアント企業の現場に入って目標を達成させるコンサルタントです。経営者がいて管理者がいて、そして現場の人たちがいます。それぞれの思惑があり、それぞれの価値観があります。
私は立場上、経営者や管理者たちと接することが多いので、管理者たちが部下に覚える不満をよく耳にします。その最たるものが「自主性」「主体性」と言って過言ではないでしょう。
「もっと自主的に動いてほしい」
「当事者意識をもって考えてもらわないと困る」
「どうしてこんなに危機感がないのか、理解できない」
などと愚痴をこぼす管理者はとても多い。「私が言わなくても、それぐらいは自主的にやってくれ。何でもかんでもイチイチ指示しないとできないのか」という苛立ちを隠せず、私に不満をぶつけてくるのです。
「自主性」を持つポイントは「焦点化」
そもそも「自主性」「主体性」とは何なのか? 言葉の意味から考えたいと思います。辞書で調べてみると「他からの指図や干渉によることなく、自分の意思で行動する態度や姿勢」と出てきます。誰かに指示されなくとも、自分でどうしたらうまくいくのかを考え、積極的に行動する。こういった姿勢が、「主体的に動いている」「自主性を発揮している」ということなのでしょう。
結果を出せるかどうかは別にして、自分で工夫しながら前向きに挑戦する姿は周囲に良い影響をもたらします。管理者はそういう部下の態度を期待しています。それでは、どうすることによって「自主性」「主体性」を持つことができるのか、について考えていきます。
ポイントは「焦点化」です。対象が「拡散」していると、自主性や主体性を発揮しづらくなります。ですからフォーカスする対象を明確に決めます。
フォーカスする対象は以下の2つ。
1)役割
2)期限
(1)「役割」に焦点を合わせる
まず第一に「役割」です。責任のある「役割」にフォーカスします。
「自主性」「主体性」どちらも「主」という文字が入っています。したがって、自分が「主」になることによって、「自主性」や「主体性」が芽生えることはあるでしょう。
つまり何らかの責任のある役割を持つ。そうすることで「主体的」に物事に関わりやすくなります。チームでプロジェクトを組み、リーダーが「チーム全員で考えていこう」という言い方で、何らかの意見を促がしても、自主的に取り組む人は少ないと言えるでしょう。リーダーが明確な誰かに対して責任を与えたわけではないから、対象相手が「拡散」してしまっているのです。「焦点化」していません。
人間の意識レベルは5階層に分かれています。(ニューロロジカルレベルの概念)上から「アイデンティティ」「価値観」「能力」「行動」「環境」の5つです。自主性が足りない部下に対し、上司は「行動」レベルで指示したくなります。しかしもっと上位概念に干渉することで、それより下の概念に強い影響を及ぼします。
つまり責任のある役割を与えることで、個人の「アイデンティティ」が変化し、その下の「価値観」や「能力」「行動」などに変化を与えやすいのです。
(2)「期限」に焦点を合わせる
2つ目は「期限」です。時間的フレームワークを作ることで、その中で創意工夫しようとします。時間概念が「拡散」していると、主体的になりづらいのです。
「誰」が「いつ」までにやるのか?これを明らかにし、本人に焦点を合わせてもらいます。期限までにできなければ責任をとる、とするのです。
曖昧な指示をしておきながら、何も反応がないと「もっと自主的に関わってほしい」「もっと主体性を発揮してほしい」と嘆く管理者がいます。確かに、具体的な役割も与えず、明確な期限を決めなくとも、積極的に関わろうとする人はいます。しかし、部下全員にそのような積極性が備わっているのなら、管理者は必要ない、とも言えます。
まずは個人個人に対して「役割」と「期限」にフォーカスさせましょう。それをしたからといって自主性を発揮するようになるか、というと必ずしもそうではないでしょう。「謙虚さとは何か?」で書いたとおり、「あるべき姿」と「現状」とのギャップを本人が理解していないことに起因しているからかもしれません。とはいえ自主性を発揮し、前向きになって仕事をしようとする人の比率は増えますし、主体的に物事に関わる面白さを覚えるよいきっかけになることも多いはずです。