営業スピードの「重要度計算」
何事も「スピード」が重要と言います。まったくその通りで、スピード感があることで、なかなか解決できないことも解決したり、スピード感がないことで、決まるものも決まらなかったりすることがあります。特に「人」を対象にした何らかの行動をするなら、スピード感は極めて重要なファクターと言えるでしょう。今回は営業にフォーカスし、スピードの重要性を計算式で表現したいと考えます。
営業スピードの重要度は、以下の計算式で考えたらどうでしょうか。
【 営業の対応遅延期間 ÷ お客様の意識の強さ = お客様のレスポンス遅延期間】
営業の対応スピードが1日遅れるとします。すると「対応遅延期間」は【1】です。お客様の「意識の強さ」が【1】だと、お客様の反応は【1日】遅れます。営業の対応が2日遅れると、お客様の「意識の強さ」が【1】なら、お客様の反応は【2日】遅れます。3日遅れると、【3日】遅れます。
3日遅れて対応しても、お客様はすぐに返答してくれると考える営業がいますが、遅れれば遅れるほど、お客様からのレスポンスは比例して遅れる、と考えるのです。ただ、お客様の「意識の強さ」が【2】だとレスポンスは速くなります。営業の対応スピードが1日遅れても、お客様の反応は【0.5日】遅れるだけです。ほとんど「すぐ」レスポンスがある、ということです。たとえ遅延期間が【5】であっても、お客様の意識の強さが【5】であれば、すぐにレスポンスが戻ってきます。お客様が何としても買いたい、購入したい、という強い意識があるなら、営業の対応がけっこう遅れても意外と速く返事をいただけるものです。
ただ、お客様の意識の強さを正しく推し量ることができるかというと、反応スピードを見なければわかりません。ということは、リスクを軽減するために、営業の対応スピードを上げればいいのです。
ここまで読んでお分かりのように、「意識の強さ」はスピードに現れてくるものなのです。
● お客様の意識の強さは、「反応スピード」でわかる
ということは、
● 営業の意識の強さは、「対応スピード」でわかる
とも言えるわけです。
つまり、スピード感の足りない営業にお客様は気持ちを揺さぶられないのです。私は現場に入って営業目標を絶対達成させるコンサルタントです。現場に入ると、上司と部下の、このようなやり取りをよく耳にします。
上司:「先週の商談の後、提案書は送ったんだろ? それから連絡は来たのか」
部下:「それが、なかなか……」
上司:「フォローはしたんだろうな?」
部下:「もちろんです」
上司:「どうしてだろう。こちらの提案内容に不満なんだろうか」
部下:「うーん。やっぱり見積り価格でしょうか」
上司:「ライバル会社に比べて、スペックに見劣りがあるかもしれんな」
部下:「そうかもしれませんねェ……」
こういう会話が延々と続くので、私が間に入って質問します。
横山:「商談は先週の月曜日でしたよね?」
部下:「そうです」
横山:「提案書はその商談の日に渡したんですね?」
部下:「あ、いえ……」
横山:「どうしたんですか?」
部下:「商談の日には間に合わなかったんで、後日、お送りしますとお伝えしました」
横山:「後日? それはいつですか?」
部下:「ええと……。先週の金曜日です」
横山:「4日遅れてるじゃないですか。フォロー電話はいつしましたか?」
部下:「フォロー電話、ですか……。昨日です」
横山:「昨日? だったら提案書を提出してから5日も遅れてますよ」
部下:「まァ、ちょっとは遅れましたが、キチンと対応しています」
商談当日に提案書を渡し、その日のうちにご挨拶のためのフォロー電話をかける、こういうスピード感でやるかやらないかで、相手の反応スピードはまったく変わってきます。スピードの重要性を理解していないのです。対応スピードが遅いのに、提案した内容や競合他社との比較を吟味しても意味がありません。
「ヘルマン・エビングハウスの忘却曲線」で言われるように、人間は20分経つと【42%】、1時間経過すると【56%】忘れると言われます。1日が経つと【74%】です。この数字が正確かどうかは関係がありません。人間はすぐに忘れる生き物だと念頭に入れてほしいのです。
商談から4日遅れて、ある会社の営業から「提案書」が送られてきても、お客様の意識レベルがそれほど強くなければ「これは何だっけ?」と、思い出すのに苦労します。商談では盛り上がったとしても、日にちが経つと、そのときの気持ちも忘れていきます。
部下がこう言い始めたら、上司は部下のスピード感を疑ってください。「この前の打合せの中では、いいお返事をいただけると言ってたんですけど、なぜかお客様が急に心変わりをしたみたいで、もう結構。我が社には必要ない、だなんて言ってきたんです」
営業の対応が遅れれば遅れるほど、お客様の反応は鈍ってくるものです。やはり「鉄は熱いうちに打て」。お客様は無意識のうちに、営業の意識の弱さを「スピード感」というわかりやすいファクターで感じ取るのです。行動スピードはスキルや能力に関係のないことですから、日ごろから強く意識したいですね。
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