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「話にならない」……話のやり取りが「炎上」するパターン

横山信弘経営コラムニスト

誰かと話をしていて、「話にならない」と考えたことはありませんか。なぜこんな反応をするのか理解できない、と憤りを覚えることはないでしょうか。自分の意見を理不尽に否定されたり、筋違いなことで反論されると気分は良くないものです。

そもそも「理不尽」「筋違い」という言葉は、「非論理的」という意味です。明らかに理屈に合わない、筋が通らない話をされると、多くの人は理不尽だ、と感じるものです。さて、それでは、どのような相手に、どのような話をすることで、そのようなケースが生まれるのでしょうか。検証していきたいと思います。

「話し手」と「受け手」とに区分して考えてみます。「受け手」が極端に反応し、理不尽なレスポンスをされるケースで多いのは、

●「受け手」が「話し手」個人を気に入らない

●「受け手」が「話し手」と立場が異なり、「話し手」の思考や環境を理解できない、馴染みがない

の2パターンです。同じような環境にいても相手のことを気に食わないと思っていると、話の内容そっちのけで否定をしてきます。まさに「理不尽」そのものといったケースです。後者は、「話し手」の人格とは関係がなく、共感を持てる立場にないため、話の内容が醸し出す雰囲気・ニュアンスに違和感を覚え、否定したくなるといったケースです。「受け手」の性格にもよりますが、今回はこの後者のケースを考えてみます。

「受け手」の理不尽な反論は、以下の2つの特徴を含んでいるので覚えておきましょう。

■ 話の中のある言葉(キャッチワード)を特定し、そのキャッチワードから反論を展開する

■ 前提条件を無視するか、勝手に修正して否定を試みようとする

それでは、具体的な事例を紹介しながら解説していきます。たとえば、「話し手」が以下の内容の話を紹介したとします。

(A)「これまで7年以上、会議の研修を実施したり、多くのコンサルタントと意見交換をしていく中でわかっていることは、業績が悪化する企業ほど、ついつい会議を増やしてしまうことだ。しかし無駄な会議が多いと自覚していても、いったん会議が定着すると、なかなか会議を減らすことができない。そのため、むやみに会議を増やさない努力が必要だ」

さてこの話を聞いた「受け手」はどのような反応を示すでしょうか。(A)の話の内容に、馴染みのある環境の人であれば、共感を持ってくれるかもしれません。実際に業績が悪く、ついつい会議を増やしてしまった経験がある経営者や管理者、もしくは外部のコンサルタント等はそうでしょう。

ところが、そのような環境に身を置いたことがない人には共感できないかもしれません。「そもそも会議などは縁遠い個人事業主」「学生や主婦など、企業に従事していない人たち」……など等。話の内容に違和感を覚える程度ならともかく、受け入れがたく、その発想や考えを「正したい」という歪んだ正義感を持つと、(A)の話を否定して、訂正を促したくなるのです。その強い気持ちが思考を歪ませます。結論がまず「否定」ですから、否定するための論拠を無意識のうちに後付けで探します。

ただ、「それは違う」と真正面から反論はしません。その環境に馴染みがないし、専門家でもないからです。したがって「そうとは限らない」という部分否定になります。(この部分否定というのはクセモノです)そして話の主旨を反転させて肯定します。つまりこの場合だと「会議を増やすことで、かえって業績を回復させた会社もあるはずだ」となります。したがって前出の(A)の話を否定したい「受け手」は、

(B)「そうとは限らないと私は思います。会議を増やすことで、かえって業績を回復させた会社もあるはずだから、会議の量と業績とは関係があるとは思えませんが」

という反論になります。

しかしながら、(A)の話に対し(B)のレスポンスは、論理的どころか、表面的にも繋がっていません。正しい認知能力がある人なら見破ることができるでしょう。(B)の結論である「会議の量と業績とは関係があるとは思えない」は、(A)の話の中ですでに打ち消されてしまっています。つまりこの部分です。「これまで7年以上、会議の研修を実施したり、多くのコンサルタントと意見交換をしていく中でわかっていることは、業績が悪化する企業ほど、ついつい会議を増やしてしまうことだ」。

「本当にそうなの?」と反論されることを見越して、「話し手」はあえて「前提条件」を最初に提示しています。ですから「話し手」はこのような反論がくることに納得がいきません。「受け手」から(B)のレスポンスが戻ってくると、この「前提条件」をもう一度確認して発言してくださいと反論したくなります。ところが「受け手」は最初から「否定」ありきでレスポンスしていますから引き下がれません。その「前提条件」を疑うという、さらなる反論を試みます。

(C)「7年間の会議研修をしたといっても、どれぐらいの企業を対象にしていたかハッキリしないし、多くのコンサルタントと意見交換をしたと言ってもそれも怪しいでしょう。ご自身の実績をひけらかせているが、これまで接した企業に偏りがあるに違いないと私は思いますが」

この反論(C)まで来ると、論理性はかなりゼロに近づいていきます。感情的になると論理的思考力は落ちるものです。「結論」を導き出す「論拠」に、ご自身の【空想】を入れた時点でアウトです。「論拠」は客観的なデータに基づく事実でなければなりません。事実と意見は切り分けなければなりませんが、意見どころか「空想」が「論拠」に含まれてしまっています。こうなると、何でもアリの状態になってしまい、「話にならない」「会話が成立しない」という状態になってしまうのです。

「否定から入る人」というのは、どこの世界でもいますが、「否定から入る人」は一般的に論理思考力が低くなりがちです。理由は簡単です。「否定」をするための論拠を後付けで偽造していくため、都合のいい論拠のみを選択して示すか、詰まるところ空想に頼るしかなくなるからです。

「Yahoo!ニュース」をはじめ、ネット上のニュース記事、芸能人のブログ、ツイッターやフェイスブックなどに、いろいろなコメントを書き込む人がいます。そのコメントを読むと、思考の「歪み度」が高い人ほどすぐにわかります。前提条件を無視したり勝手に修正するケースと、「ユーチューブで稼いでいるという、このHIKAKINと名乗る青年は、おそらくこういう生活をしているに違いない。だからこういう輩は信用できない」といった空想を交えるケースとの2パターンがあります。「歪み度」が低い人――つまり、論理的に否定コメントを書く人は、事実に基づいた正しい論拠を明示したうえで否定するのが特徴です。理屈に合っているので、「話し手」は否定されても理不尽だとは受け止めないでしょう。

リアルに「話し手」と「受け手」とが同じ空間にいるのであれば、話のやり取りで炎上することはあまりないはずです。「話し手」と境遇が似ていたり、事情を知っている人が「受け手」になる可能性が高いからです。しかしブログやソーシャルメディアを使って発信すると、不特定多数の人の目にさらされます。SNSなどで拡散され過ぎてしまうと、「話し手」と違う環境の人にも目に留まり、極端で感情的なレスポンスが戻ってきてしまうこともあるのです。このようなケースを避けたい場合は、「受け手」となり得る人を限定する工夫が必要です。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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