仕事で「いっぱいいっぱい」にならないよう心の余裕を持つ方法
仕事が立て込んでいて、心に余裕がなくなるときは誰にでもあります。そういう場合、ついつい口に出してしまう言葉が「いっぱいいっぱい」です。
「あれもやらなくちゃいけない。これもやらなくちゃいけない……。もう、いっぱいいっぱいだ」
たまに「いっぱいいっぱい」な状態に陥るのならともかく、この言葉が口癖になってしまうと問題です。「いっぱいいっぱい状態」が恒常化すると、心に余裕が持てなくなり、感情のコントロールもしづらくなります。常に「いっぱいいっぱい」と口にしてしまう人は、目の前の仕事を「先送り」する習慣がないか、自問自答してみましょう。
何かやるべきことがあり、それを「先送り」すると、その瞬間はストレスから解放されたかのような気分になります。しかし、それは一瞬だけです。いずれしなければならない事柄であれば、「いつかはやらなければ」という思考ノイズがずっと脳の中に滞留することとなります。
滞留する場所は、脳の「短期記憶」。脳には「短期記憶」と「長期記憶」があり、短期記憶は一時的に記憶を蓄えるバッファー記憶装置の役割を果たしています。別名は「ワーキングメモリ」です。
「いっぱいいっぱい」という言葉を出してしまう人は、やることが多すぎて余裕がない。だから「いっぱいいっぱいです」と言ってしまうのでしょうが、果たして本当に可処分時間(1日の中で、生活維持に必要な時間を差し引いた後に残る、自由に使える時間)に比べて作業量が多く、余裕がないのか? 一度立ち止まって問い掛けてみるのもいいですね。
先送りしている仕事が他にもあり、「あれもやらなければ」「あれもまだできていない」「これってそもそもどうしてやる必要があるんだったっけ?」といった思考ノイズで、脳の「ワーキングメモリ」があふれている状態なのかもしれません。つまり「いっぱいいっぱい」なのは、『自分の可処分時間に対する、現在抱えている仕事を処理するために必要な時間』ではなく脳の「ワーキングメモリ」ではないか、ということです。
物理的には時間があるのにもかかわらず、思考ノイズのせいで脳の「ワーキングメモリ」に情報を蓄えることができないため、脳のデータ処理能力が低下し、論理的に物事を考える余裕がなくなる、という現象があります。当然、この状態になれば、正常にデータ処理ができないためストレスがたまっていきます。
脳の「ワーキングメモリ」にノイズがたまり、脳の処理能力が低下していますから、ますます目の前のやるべきことを着手できなくなります。「先送りスパイラル」に陥っていき、次第に大きな苛立ちを覚えることになるでしょう。
反対に、「すぐやる」習慣がある人は、脳の「ワーキングメモリ」に一定の余裕があるため、脳が適切な処理をしようとします。「どうせいつかはやることだから、今すぐにやったほうが効率的だ」「これなら20分で終わる。すぐにやれば気分もいい」などと論理的に考えることができるのです。ですから、仕事が「できる人」ほど、スケジュールに余裕がなくても、脳の「ワーキングメモリ」に余裕があるため、心を乱すことなく膨大な仕事量をこなすことができます。
どんなに頭の回転が速かろうと、素晴らしい知識を持っていようと、脳の「ワーキングメモリ」がいっぱいいっぱいなら、適切な処理ができません。ですから「先送り」の習慣がある人は、過去の実績や知識、資格、学歴などと関係なく、仕事が雑になっていきます。
心に余裕を持つためには、脳の「ワーキングメモリ」に余裕を持つことが大事です。そのためには、やらなくてはならない目先の仕事を「先送り」することなく、ドンドン片付けていくことです。「ぐだぐだ」「うじうじ」「ごちゃごちゃ」「あーだこーだ」といった思考ノイズが脳の中で乱反射しないよう、日ごろの「すぐやる習慣」が重要ですね。