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清宮だけじゃない! センバツの主役/その4 西巻賢二[仙台育英]大関秀太郎[作新学院]etc.

楊順行スポーツライター
昨夏優勝の作新学院は、5校目の夏春連覇に挑む(写真:岡沢克郎/アフロ)

Cブロックは、秋の地区大会優勝校が4つ入った激戦ゾーンだ。まず北海道優勝校の札幌第一。秋季大会のチーム打率が・388と32チームのトップで、1年生ながら三番を打った柴田颯が目立つ。11試合で打率・444の14打点と堂々の主軸だ。キャリアがすごい。中学時代は小樽シニアでジャイアンツカップに準優勝。U15日本代表として台湾とのアジアチャレンジマッチでは、三番・サードで19打数10安打。チームメイトだった野村大樹(早稲田実)らを尻目に、MVPを獲得している。入学直後からポジションをつかんでもまあ、なんの不思議もなかったわけだ。対戦相手は、1試合あたりの盗塁数がトップの健大高崎。チームに、センバツ初勝利をもたらしたいところだ。

福井工大福井と仙台育英は、北信越、東北チャンピオンの激突。福井で、もしかしたら大化けしそうなスラッガーは山岸旭だ。昨秋の、北信越大会準々決勝。富山東との初回、フェンス直撃の中越え先制三塁打を放った山岸は、2回にも左翼にライナーの二塁打、5回は左中間に公式戦初ホーマーをたたき込み、打線の爆発で回ってきた同じ5回の2打席目は、遊撃左に内野安打。後続の適時打で11対1の5回コールド勝ちとしたが、その時点ですでにサイクル安打が達成されていたわけだ。

4打数4安打ならめずらしくもないが、5回でのサイクル達成となると、ギネス級ですよ……と問うと、そうやねぇ、と大須賀康浩監督も感嘆する。

「スイングが速いのにコンパクトで、2ストライクからでも自分のスイングができる。入ってきたときはまるで目立たなかったけど、新チームになって急成長したね」

このサイクルを含め、北信越大会は通算15打数7安打5打点と絶好調だった。急成長の秘密は、「お前を最高のスラッガーにする」とほれ込んだ田中公隆コーチの指導にある。山岸によると、

「田中コーチには、"近田のように突き刺すライナーを打て"といわれています」

近田とは、田中コーチが大阪桐蔭時代に指導した近田拓矢のこと。山岸のイメージが、桐蔭で四番を務め、13年夏の甲子園で一発を放った強打者にだぶるのだそうだ。センバツでは、サイクルは無理でも、近田ばりの一発があるかも……。

秀岳館には連続4強メンバーがずらり

ただ、対する仙台育英は総合力が高い。エース左腕・長谷川拓帆は昨秋、9試合61回を投げて防御率0.89と、32校中トップだ(投球回数30以上)。完投能力もあるが、長谷川が故障から復帰するまでは、充実した投手陣がチームを支えた。そのうちの一人が、西巻賢二。167センチと小柄ながら、斬り込み隊長、抑え投手、主将と三役を担う。

準優勝した15年夏の甲子園、1年でベンチ入りすると、東海大相模との決勝では、小笠原慎之介(現中日)からヒットを放っている。昨秋の東北大会では17打数7安打と気を吐いたし、安定した遊撃の守備は、「2学年上の平沢(大河・現ロッテ)が手本にしていた」(佐々木順一朗監督)ほど。おまけに、二度の抑え登板でも2回を無失点に抑えた。

震災のあった11年、福島・小名浜少年野球教室で全国大会に出場。楽天ジュニアにも選ばれた。仙台育英学園秀光中時代、主将として全中優勝を経験し、高校進学時には、

「一緒に育英に行って、東北初の日本一になろう」

と楽天ジュニアのチームメイトだった現エース・長谷川、現三番・佐川光明に声をかけた。3年目の春、その大きな夢に挑戦する。

昨年春夏ともにベスト4と、強豪の仲間入りをしつつある秀岳館は田浦文丸、川端健斗のダブルサウスポー、廣部就平、木本凌雅の三、四番ら、4強メンバーが多く残っている。「昨年以上に層の厚いチームができた」とは鍛治舎巧監督で、成績も昨年以上となるか。

昨秋関東の覇者は、作新学院だ。エース左腕・大関秀太郎は昨秋、県大会準々決勝から関東大会決勝までを一人で投げ抜き、最多失点が1、通算の防御率1.02と抜群の安定感。ストレートは130キロ台中盤だが、スライダー、チェンジアップを駆使して打たせて取るのが持ち味だ。昨夏、栃木大会ではベンチ入りしたものの、甲子園ではメンバー外。実はこれ、優勝した昨夏のエース・今井達也(現西武)と同じパターンだ。

「昨夏、ベンチからは外れましたが甲子園に帯同して、今井さんと話をさせてもらう機会が増えました。印象的だったのは、"ピッチャーは、一人で練習しなければいけない"ということ。冬、一人でどれだけ耐えて練習するかで、花が開くと信じています」

過去4校しかない夏春連覇。あの池田(1982年夏〜83年春)以来、34年ぶりの快挙に作新学院が挑む。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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