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ニートになった、ならざるを得なかった理由

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 「働いたら負け」とネット上では揶揄されるニートだが、その事由は多種多様

先日15-34歳が43人集まると、そのうち1人がニートでも解説した通り、日本における「ニート」(就業、就学、 職業訓練のいずれもしていない人。元はNot in Employment, Education or Trainingの略でNEET)と同義語とされる「若年無業者」(15-34歳の非労働力人口(求職活動をしていない人など)のうち、家事も通学もしていない者)は、直近の2012年で62万人、さらに上の世代の35-39歳(高齢ニート)まで含めると83万人居るとされている。

↑ 若年無業者数(≒ニート)の推移(万人)(参考属性追加)(-2012年)
↑ 若年無業者数(≒ニート)の推移(万人)(参考属性追加)(-2012年)

このニートな人たちに、なぜニートになったのか、ならざるを得なくなったのかを尋ねた結果が次のグラフ。総務省統計局の2012年版就業構造基本調査からのものだが、大きく「就職を希望しているのだが、現在は何らかの理由で求職活動をしていない(非求職者)」と「就職そのものを希望していない(非就業希望者)」に二分される。

まずは就職希望だが求職活動をしていないニートの、その理由。

↑ 若年無業者の非求職理由(就業希望者のうち非求職者)
↑ 若年無業者の非求職理由(就業希望者のうち非求職者)

現在ケガや病気などで求職不可能な事例がもっとも多く26.5%。次いで資格取得のための勉強をしている、いわゆる「浪人状態」の人。そして「職を探したが見つからないので、様子見モード」が続く。

続いて就職そのものを望んでいない人。世間一般的にはこちらの方がニートの定義により近い。

↑ 若年無業者の非就業希望理由(非就業希望者)
↑ 若年無業者の非就業希望理由(非就業希望者)

こちらもケガ・病気を起因とするものが最多回答で3割近く。次いで資格取得のための浪人(資格を取得してから就職活動をする、あるいは自営業をはじめるため、現時点では就業そのものを希望しない)。上位2項目への偏りがやや大きいものの、「就業希望者のうち非求職者」と大きく変わるところは無い。

現時点で就業する意欲がある・無い双方の事例でもその多くは、単に怠惰な生活を過ごしている、楽隠居的なイメージのあるニートとは程遠い、「仕方なくならざるを得なくなった」「自分の将来のための一時的な状況に過ぎない」ことが分かる。

また「探したが見つからない」「希望する仕事がありそうにない」「知識・能力に自信がない」などの項目は、「個人の問題(努力不足、現状認識不足など)」「雇用環境の問題」双方の可能性、あるいは両方の複合的な結果による場合があり、一概に世間一般の(どちらかといえば否定的なイメージによる)ニートとして振り分けるのは問題がある。「その他」の回答率も高く、選択肢には該当しにくい、個々のさまざまな理由によるニート化も容易に想像できる。

他方、「急いで仕事につく必要がない」「特に理由は無い」は、世間一般的に語られる「ニート」の筆頭に挙げられる。

「若年無業者(ニート)」問題は「ニートの状態とは、そもそも何が問題なのか」という根本部分から考察し直す必要がある。そして多種多様な原因があることから、解決は一筋縄ではいかない。その実態が今回のデータからあらためて想像できよう。

ちなみに「急いで仕事につく必要がない」「特に理由は無い」に限ったニート数は6.8万人。「その他」項目に類似理由が多少含まれていることを勘案するに、7万人から8万人程度、多くても10万人位が、世間一般的なイメージに該当する「真のニート」と言えるのではないだろうか。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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