環境先進国ノルウェー、しかしパリ協定が達成できると思う国民はわずか19%
WWFが19日の電気を使用しないイベント「アースアワー」に伴って、中国、インド、アメリカ、スウェーデン、ノルウェーの5か国における、気候変動問題の意識調査の結果を発表した。
気候フレンドリーになることは重要80%
「気候に優しい暮らしをすることは重要か?」という問いに対し、「重要」、「とても重要」と答えたのは5か国とも80%を超えた。「気候変動を心配している」、「政治家がもっと行動を起こすべきだ」と答えた割合も5か国で75%を超える。
ノルウェー人は自国での問題解決において悲観的
全体の調査に対して、「気候変動問題は改善できる」とポジティブに回答したのは中国とインド。その一方、「環境先進国」だというイメージを国際的に持たれやすいノルウェーでは、国民が気候変動を深刻に捉えながらも、問題解決においては悲観的な傾向にあるという結果がでた。
「パリ合意の目標に到達できると思うか」という問いに対し、「できると思う」と答えた中国66%、インド65%に対し、アメリカは25%、スウェーデンは24%、ノルウェーは最下位の19%。
中国やインドほど、北欧現地では将来の直接的な気候問題をまだ想像できず
「気候変動はあなたのライフスタイルにいずれ大きな影響を及ぼすと思うか」という問いに対し、中国やインドは60%前後に対し、スウェーデンは28%、ノルウェーは最下位の27%。北欧2か国では、気候変動の将来的な影響を、現時点では国民が深く認識していないことが浮き彫りに。
中国ほど、ノルウェーの政治家は手腕を発揮できていない?
WWFノルウェーは、ノルウェー人は環境問題に大きな関心を持ちつつも、中国とは対照的に、パリ協定は実現できないだろうと悲観的であることを強く指摘。その原因は、両国の政治家の手腕の違いと、国民が政治家に寄せる信頼度にあるとしている。
WWFノルウェーの気候・エネルギーチーフのヨン・ビャルトネス氏は、公式HPの発表で、「ノルウェーの数少ない楽観主義者は、国外での動向を追っている者たち。反対に、ノルウェー国内では、25年間も誰が排ガスを削減するべきか議論し続ける一方、その間に排ガスは増加。このような状況で、悲観主義者が増加するのは自然のことで、政治家や産業界が率先して動かなければいけない」とコメント。しかし、今、ノルウェーでは「最もグリーン」なはずの政治家たちによる環境政策が揺れ動いている。
緑の環境党の支持率が下落
これまでの記事でも挙げたように、環境問題の改善が期待されて、国内各地で大きな権力を持つことになった緑の環境党だが、最も大事な戦略地である首都オスロで、市民、産業界、対抗勢力から大きな反発にあっている。
緑の党が権力を握ったノルウェーでは混乱が起きている。なぜ苛立つ人が多いのか。車や石油を敵にまわす代償
現実的?オスロは4年間で排ガス50%削減、車5台に1台を排除予定。強制的な緑政策に批判殺到中
パリ協定の達成のために、緑の環境党を筆頭とするオスロ市議会の行政府は、理想高い環境目標を掲げた。しかし、環境問題に敏感な全国紙アフテンポステン、研究者などからは、「現実的には不可能な理想目標だ」、「自転車に乗ってばかりの政治家たちには、テクノロジーで解決するアイデアがないのか。自転車だけが奇跡の解決策ではない」などの批判をうける。緑の党と、市民の間で距離が広まりつつあることは確かで、支持率も降下中だ。
首都での緑政策の動向は、気候変動問題におけるノルウェー人悲観主義者を今後増加させるか、減少させるか、その火種となりそうだ。
Photo&Text: Asaki Abumi