「今年の夏は全国で40度超の猛暑」!? 僕がツイッターの面白系botをRTしないワケ・番外編
「今年の夏は40度超の猛暑」!?不安が煽られ騒ぎが広まる
政府の施政方針決定とその正式発表は5月中になるが、原発停止のあおりを受け、今夏の電力事情は昨年以上に厳しくなるとの指摘がなされている。そのような電力需給に関する漠然とした不安が浸透する中で、先日「チベット高気圧と太平洋高気圧の影響を受け、今年の夏は東北以南の全国で40度超の猛暑が予想される」との解説を行うテレビ番組の画像と共に、「今年の夏の目標。全員生きて帰れ」という類の、暑さを覚悟しろ的な話がツイッター上で流され話題を呼んだ(詳細は「「今年の夏は40度の猛暑」というテレビ解説画像は去年のもの」)。
そろそろ夏の電力事情の話が本格化するタイミングであることに加え、ゴールデンウィークに入りツイッター上にアクセスする人が増えていること、そして何よりもテレビ画面を添付させてその確からしさを裏付けていることもあり、あっという間に今件ツイートは広まっていく。現時点で1万5000件近いリツイートが確認されており、少なくともそれだけの人達の目に留まったことになる。
「40度超」予想は昨年の話
しかし結論として、これは昨年のもの。該当画面は昨年7月に複数のブログなどで使われていたもので、今年のものではない(画像検索経由で確認済み)。そして気象庁では先日4月25日付で、向こう3か月間及び夏の天候の見通しを発表している(「防災情報 >季節予報・夏 >全般予報の解説資料」)。それによれば現時点では「北日本では、気温は平年並か低い見込み」「西日本、沖縄・奄美では、気温は平年並か高い見込み」「東日本では、気温はほぼ平年並の見込み」との予報が出ている。またいわゆるエルニーニョ現象が発生する可能性があり、結果としてチベット高気圧や太平洋高気圧の北日本付近への張り出しが弱くなる場合があるとのこと。
インパクトのあるテレビ画面と共に「今年の夏は40度の猛暑」を触れ回ったアカウント。これを調べると案の定、以前「僕がツイッターの面白系botをRTしないワケ」などで解説した、「盗用コンテンツで集客」「時々広告ツイートを混ぜて売り上げを狙う」タイプの「他人の創作物を無断で盗用して懐を肥やすbot」であることが判明する。しかも画像を添付してテキストに真実性を多分に盛り込み、煽動する・注目させる切り口は、直接リンクを同一ツイートに挿入はしていないものの、「動画の「慣れ」でトラブるダマシのテクニック」で解説した「動画やテレビの画像ならば本物だろう」と誤認させる方法に他ならない。
今件が特に問題となったのは、この類のアカウントが「人気のありそうな画像やツイートを片っ端から盗用する」点を起因とする。「多くの人に読まれたツイート」との条件だけで盗用したため、それが季節性を有するものとまで考えが及ばず、結果として去年の内容をそのまま盗用、期日が表記されていないため、意図せず今年の夏のものと解釈できる形で広め、多くの人に誤解を生じさせた点にある。
盗用系アカウントは時間を考慮せずに盗用するので(何しろ「人気が集まりそう」との思惑にかなえば、古今東西を問わずに盗用してしまう)、このようなタイムラグが発生して、さらなる迷惑を周囲にまきちらすこともある。今件は一連の問題アカウントによる所業の悪質性・問題性の一面を知らしめてくれるものとして、注目に値するサンプルともいえる。
……あるいは該当アカウントはその誤認と、それによる話題性の高まりまで見越した上で、盗用したのかもしれない。タイミング的にもその可能性は否定できない。だとすれば、単なる面白可笑しなコンテンツ盗用だけでなく、脅しすかしによる集客を行うものとして、極めて悪質なものであると断じざるを得ない。
ちなみに今夏の気温や電力需給の実態だが、現時点においては上記にある通り「暑さは例年並みかやや低め、西日本では少々高めかも」「電力需給は昨夏より厳しい可能性が高い」。40度超云々はともかく(一部地域では実際に40度を超すこともあるだろう)、対応などを合わせ気を引き締める必要があるのと共に、震災から3年を経てなお電力需給で非常事態が生じている状況を憂い、一刻も早い正常化への施策断行を望まずにはいられない。
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