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パリーグ頂点への道 2015

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

得点と失点から妥当な勝率を予想するピタゴラス勝率、得点の2乗÷(得点の2乗+失点の2乗)を用いて、昨季の成績を基に80勝を挙げるためには各球団何が必要だろうか。

ソフトバンク・・・打撃、守備、先発、中継ぎ全てが充実

チームOPS.740は12球団トップで607得点はリーグトップ。打順別OPSを見てもダブルクリーンアップ打線と呼べるほど下位打線の数値も高く、また打線の厚みから打力優先のオーダーを組んでいるイメージもあるがフェアゾーンに飛んだ打球をアウトにした割合を示し、チーム全体の守備範囲を表すDERもかなり優秀で12球団で唯一70%を超える。2軍もウエスタンリーグで優勝し塚田、牧原、猪本らが好結果を残したが1軍の試合に出場するためには攻守共に乗り越えなければならない壁は高い。

リーグ2位の522失点に抑えた投手陣では、20試合以上に先発しローテーションを守ったと言えるのはスタンリッジ、中田、攝津の3人。他にも候補がたくさんいる中、平成の怪物・松坂が加わった。中継ぎ陣は与四球1つ当たりいくつの三振を奪ったかを示すK/BBが極めて優秀。これは数値が高いほど制球力と奪三振能力に秀でた完成度の高い投手とされており3.5以上あれば文句無し。五十嵐3.94、サファテ4.36、森福3.36、森3.60という数字が並び僅差で終盤を迎える展開になれば間違いなくアドバンテージはソフトバンクにある。

打撃、守備、先発、中継ぎ全て戦力は豊富で、得点失点共に今季より10点程度成績を落としても十分優勝争いの中心にいる。

オリックス・・・他球団の追随を許さない投手力

最も際立つのは投手力。468失点、WHIP(1イニング当たりに出したランナーの数)1.20は12球団最少。被本塁打87本、奪三振1127、与四球419は全てリーグトップ。馬原、佐藤、平野佳の中継ぎ陣は健在で、懸念事項だった金子の残留も決まり、広島からバリントンも加入した。バリントンは広島での4年間で40勝42敗と星勘定ではほぼトントン。リーグの平均的な投手と比べて何点の失点を防いだかを示すRCAAは2011年から順に16.55、−16.12、11.36、−13.92点となっており、これもトータルで見ればほぼトントン。大きく勝ち星を量産することは出来なかったが、1シーズン当たりの投球回は170回を超える。ローテーションを守ってイニングを稼げるという点では優れている。

野手陣は小谷野、中島、ブランコが加入し長打力が上がっている。DERも70%目前でソフトバンクに次ぐ2位と守備面に文句なし。中日のところでも触れたが近年は投手力の充実したチームが優勝する傾向がある。昨季と同じく584得点が挙げられるなら、失点が50点増えても80勝を上回る計算だ。投手陣が期待通りの働きをすれば2厘差で涙を飲んだ昨季のリベンジが果たせる。

日本ハム・・・ゴロアウトのお家芸で挑戦者から王者に

昨季は得点、失点共にリーグ平均に近く勝率も.518といかにも3位らしいシーズンとなった。チームとしては打撃、守備、走塁、投手成績で飛び抜けた特徴は無し。そんな中、大谷が11勝&10本塁打と二刀流として成果を挙げた。中6日の投手としての出場を軸にしながら野手としての出場も続けた大谷、昨季は24試合に先発し234打席に立った。平均的な投手より防いだ失点は約19点、平均的な打者より多く生み出した得点は約9点、つまりチームに約28点分のアドバンテージを作ったことになる。これは投手に専念し登板数があと1、2試合増えた場合に防いでいたであろう失点も、打者に専念し600打席に立ったとした場合に生み出していたであろう得点も超えている。昨季の起用法は理にかなったもので、二刀流の成功例としてNPBの歴史に刻まれるだろう。

オフの補強では2006年、2007年の連覇時の主力・田中賢介が復帰した。チームは長打を打たれるリスクの低いゴロタイプの投手を多く揃え失点を抑えるのが一貫した方針となっている。その要となるのはゴロを確実にアウトにする堅実な守備力。二塁手として田中の捕殺数は2007年から2010年まで4年連続でリーグトップと実績十分で、昨季99試合で二塁を守った中島も田中と遜色ない数字を残している。コンバートを含めまだ今季の陣容は明らかにされていないが守備が投手を助け失点を減らしたい。不調に終わった吉川、武田勝らが奮起し今季より43点の失点を減らせばCSの挑戦者から待ち受ける王者へと立場を変える。

ロッテ・・・両助っ人に期待も課題は投手陣

オフに目立った動きがなかった中でデスパイネの残留が最大の補強と言われている。昨季45試合の出場で打率.311、12本塁打、OPS1.001だったスラッガーがこのペースでフル出場していたら生み出していた得点は110点。キャリアハイの成績を残したオリックスの超人・糸井に次ぐ数字となる。得点力アップは確実だろう。また、デスパイネの陰に隠れる形となったがクルーズも残留。昨季の打撃成績は打率.238、OPS.687と決して高くなかったが、フェアゾーンの打球が安打になった割合を示すBABIPが.233と低かったため運が悪かったという見方も出来る。例えば、長年打率.270前後だった選手がある年だけ安打を量産し3割を達成。ようやく素質が開花したかに思えたが翌年からは以前の姿に逆戻り。このようなケースはその年だけBABIPが高かった可能性が高い。BABIPは収束する傾向があるため、仮にクルーズのBABIPが平均に近づくとすれば、打球がフェアゾーンに落ちる割合が少なくとも5分は上がる。クルーズが昨季放った108安打の内、なんと45%以上が長打。こちらも得点の上積みが期待出来そうだ。ただし問題はリーグ最多だった失点の方にある。両助っ人の活躍で得点が40点増えたとしても減らさなければならない失点は113点。優勝への道のりは険しく見えるが5年周期で訪れる過去のゴールデンイヤーも前評判は決して高くなかった。先発陣の防御率は4点台がズラッと並ぶだけに昨季が底だったと思わせる奮起に期待。

西武・・・大自然コンビのブレイク次第で台風の目に

先発陣の防御率3.94に対し、中継ぎ陣の防御率は3.46。これは抑えの高橋の存在が大きく、右腕に限れば中継ぎの防御率は4.05で、高橋を除く中継ぎ陣の防御率は3.71となる。長年ウィークポイントと言われていたブルペン陣に光明が差した形だが、昨季喫した600失点をなんとか500点台中盤まで改善したい状況に変わりはなく、先発陣では岸が孤軍奮闘したが他の投手は全員黒星が先行。内容的にも牧田、菊池と本来貯金を作らなければならない立場の2人が平均的な投手よりも失点を防ぐことが出来ず、4番手以降の投手をカバー出来なかった。2013年には共に約19点の失点を防ぐエース級の働きを見せていただけに今季もそれと同等のパフォーマンスを期待したい。

得点はリーグ平均とほぼ同じだったが、今季以降の上積みへの期待度は12球団1かもしれない。昨季シーズン途中からの加入でありながら本塁打王に輝いた大砲・メヒア、106試合の出場で34本塁打だから開幕からスタメンに名を連ねていれば48発ペースで本塁打を量産していたことになる。生み出した83得点もフルシーズンに換算すれば112点とMVP級の数字。更にボールを捉える能力は大阪桐蔭史上ナンバーワンの森や、パワー満点でおかわり2世の呼び声高い山川も控えている。将来的に実現するであろう3番・森、4番・山川はそのまま日本代表のクリーンアップになってもおかしくないほど能力が高く、ブレイクへの期待度なら12球団屈指だろう。

昨季は4月終了時に借金10とスタートでつまずき、優勝はおろかAクラスが遠かったが、牧田、菊池が失点を40点近く減らし、メヒアと森、山川の大自然コンビが爆発して得点を57点増やせれば2強との予想が占める今季のパリーグをかき回す存在になる。

楽天・・・大ブレイクか大当たりか起爆剤が必要

12球団最少の78本塁打、549得点が示すように打順別OPSも1番の.827、4番の.791、5番の.721を除く6つの打順で.700未満と迫力不足。スタメンでその現状だから代打成績も95打数14安打の打率.147と成功率は低い。しかも唯一OPS.800を超えていた4番・ジョーンズが退団した。首位打者争いをした銀次がケガなくフル出場を果たせば得点力向上は見込めるものの、ヤクルト・山田のような大ブレイクか新外国人が大当たりでもしないとやや厳しい。

昨季の先発陣は則本1人に頼る数字になっており、ローテーション投手はいてもエース級と呼べる投手はいなかった。期待の若手ではルーキーだった松井裕が3連敗からプロ野球人生をスタートさせたが、最終的には116回を投げて被本塁打はわずかに2本、イニング数を上回る126三振を奪いドクターKの片鱗は見せた。そしてドラフトでは松井裕に続いて安楽を引き当て2年連続で甲子園のスターを獲得。高卒1年目や2年目の選手に過度な期待は禁物だが将来的には楽天投手陣を背負う2枚看板となってくれるはずだ。

大物の補強と言えるのは広島から移籍の守護神・ミコライオぐらいだが藤江、山崎、梅津と他球団を戦力外になった選手を獲得。DeNAを戦力外になった福山が中継ぎの柱としてベルペンを支えているように新天地で輝く可能性も十分にある。特に藤江は楽天がチーム編成に取り入れているセイバーメトリクスでは高い評価を得ていた選手だ。真っ先に連絡をしたのも頷ける。

今季はほぼ全ての外国人選手が退団する大幅な血の入れ替えを断行して臨むが、優勝には得点失点共に60点以上の成績アップが必要。選手層が厚くはないだけに主力が長期離脱しないことはもちろんとしてその上で、外国人選手が当たりであること、則本の他に柱となる投手を確立させることが絶対条件となる。

セリーグ頂点への道 2015

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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