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日本協会新会長就任の裏で 流通経済大学・内山達二監督がオールスター勝利を語る【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター

関東ラグビー協会が主催する関東大学オールスターゲームが、28日、東京・秩父宮ラグビー場であった。リーグ戦選抜が対抗戦選抜に33-29で勝った。シーソーゲームの終盤に逆転劇を演じた格好だ。

関東大学対抗戦と同リーグ戦の各選抜チームが激突するゲームは、今回で3度目。大学選手権6連覇中の帝京大学が加盟する対抗戦選抜を向こうに、リーグ戦選抜は2連勝を決めた。試合後、2季連続で指揮を執った内山達二監督が取材に応じた。

流通経済大学を率いて10年目の内山監督は、一昨季から引き続きチャールズ・ロウヘッドコーチとの二人三脚でリーグ戦3連覇を目指す。

大らかな気風で知られる。この日の対抗戦選抜を率いた帝京大学の岩出雅之監督は、しばし内山監督に選手指導やチーム運営について助言することもあるようだ。「場合によっては敵に塩を贈るみたいに映るようなこと、タツが本当にいい奴だからしてしまうんですよ」と強調したことがある。

なおこの日は、グラウンドのそばの施設で日本ラグビー協会の岡村正新会長の就任会見があった。試合中だった14時半からの開始とあって、報道陣の多くは試合の前半途中から後半の中ごろまでを観戦できなかった。各競技団体の取材経験が豊富な記者によれば、「これは世界的にも珍しいことではない」という。

以下、勝利に喜ぶ内山監督の一問一答(注釈つきの箇所以外は当方質問)。

――2連勝、ですね。

「もう、嬉しいですよ。選手が頑張って盛り上げてくれて。みんなが各チームにこの経験を持ち帰って、リーグ戦で切磋琢磨して。いま、帝京大学がひとつ抜けているところですが、ウチはもちろんリーグ戦の全てのチームがそこへ向かっていけるということを見せられた。リーグ戦から日本一のチームが出て欲しいですし、それでラグビーが盛り上がる。…面白いゲームでした」

――東海大学の藤田貴大キャプテンを軸に、チームがまとまっていました。

「(コーチングスタッフが)食事、1日でできる戦術のプレゼンなど、ワンチームになるための取り組みをしているんです。ただ、去年もそうなんですけど、リーグ戦のチーム同士に垣根がなくて、ワンチームになるのが早い。リーダーを中心にまとまっている。今年の藤田、本当にいいリーダーです。(リーグ戦で)当たるのが嫌です! 嫌だけど…いい男ですね」

――オールスターの運営について。まず、選手の交代。昨年度までとは違い「自由」ではなくなり、一度退いた選手は他選手の怪我以外の理由では再登場できなくなりました。

「そう。ルールを変えたんです。ただ、多くの選手を出せるようにした方がいいのかな、と。そのあたりはレビューして、来年に向けて(改善していく)。年々、人も増えてきている(公式入場者数は前回が3188人、今回が4320人)。いいゲームができているから。観に来た人に楽しんでもらえる仕組みづくりを、我々も考えなきゃ、と思いますね」

――(隣の記者による質問)もうひとつ新たな試みがありました。各団体の下部リーグの選手によるキッカーコンテスト(試合直前に開催)での成績上位者2人ずつが、試合中のトライ後のコンバージョンを蹴ることになりました。

「コンバージョンだけという約束。ただ、あれは蹴る子がかわいそうでしたね。色んな大学の選手を出せるというメリットはありましたが、ラグビーという競技の特性上『キックだけ』では入りづらいかな。僕らのチームでは皆の前で彼ら(リーグ戦選抜のキッカーとなった関東学院大の菅沼神兵、東洋大の平原賢)を紹介して、ワーッと盛り上げて…という風にしたし、彼らもしっかりと決めてくれて嬉しかった(5本中4本成功)、いい経験にはなったと思うんですよ。ただ、本人の気持ちを考えると…。『外したらどうしよう』と、責任が重いかな、と」

――試合中、日本ラグビー協会の新会長就任会見がありましたが。

「就任会見? …へぇ。僕ら下々のものには…」

――改めて、試合について。対抗戦選抜は、後半からリザーブの8枠を占めていた帝京大学のメンバーを登場させました。しかし、終盤にリーグ戦選抜が逆転。

「予想通りでした。それは皆もわかっていた。受けて立とう、と。(後半の対抗戦選抜は)やるラグビーが共有されて、スピードが上がってきた。ただ、そこの流れを止められた。コンバインドチームだから、システムがどうとかではなくてメンタリティ(が要因)です。どれだけワンチームになれるかがテーマだと話していた。きょうは1736名、リーグ戦グループから学生たちが応援に来ていた。皆の誇りになるような試合をしなければ、という心意気を感じました

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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