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日本代表リーチ マイケルキャプテン単独取材&3位決定戦…ワールドカップ取材日記11【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
南アフリカ代表対アルゼンチン代表の3位決定戦はオリンピックパークで。(写真:アフロ)

ラグビーワールドカップのイングランド大会が9月18日~10月31日まであり、ニュージーランド代表が2大会連続3回目の優勝を果たした。日本代表は予選プール敗退も、国内史上初の1大会複数勝となる3勝を挙げ、話題をさらった。

以下、日本テレビのラグビーワールドカップ2015特設サイトでの取材日記を抜粋(11)。

【10月30日】

朝6時半頃、起床。ベッドの上でぐだぐだしつつ、よっ、と、重い腰を上げます。部屋ではあまりにwi-fiが弱いので、廊下へ出ます。階段を降ります。よし、「LINE」を起動…。起動…。起動…。繋がりました。

「あ、もしもし、すみません。何度も」

声の主は、日本代表のリーチ マイケル主将です。ずっとイングランドに滞在する僕にとっては、ジャパンの選手が「時の人」になった後に喋っているのを1対1で聞く、最初の機会です。

――どうですか。                                        

「忙しいですね。テレビ出演があって、取材とかで人と会うとかで…」

10月11日のアメリカ代表戦で右の肩鎖関節を脱臼したというリーチさんには、31日の決勝戦の展望記事のためにお話を伺いました。大会前には南半球最高峰スーパーラグビーのチーフスでプレーしており、解説にはうってつけ。多忙であることを承知で、無理を言ってお願いしておりました。

話してゆくなか、改めてジャパンの裏側に触れます。

――チーフスにいて感じた、ニュージーランド代表の普遍的な強さは。

「人の弱みやミスを狙いまくる。クルセイダーズと試合をした時も、ダン・カーターのキックのモーションが大きすぎるからと、そこでのチャージからトライを取った。他にもタックルのできないセンターを狙う、とか、1人ひとりを見ます」

――今回のジャパンも、相手のことに詳しかった。

「その分析は、ニュージーランドのものを採り入れました。相手がどういう人間性かまで、知っていきます。相手のメンバーの名前、特徴、弱み、強みを書いていく。代表では分析の方が1人ひとりのビデオクリップを持ってるから、それを観ます。もし、どっち側へのステップが得意か、とか」

原稿(リンクは先ほどのものと違います)を書き、支度を終え、向かう先はオリンピックパーク。南アフリカ代表とアルゼンチン代表の3位決定戦を取材します。

南アフリカ代表は、自陣からでもキックではなくランとパスを多用。接点からボールを出すテンポが速い。スマッシュ、スマッシュ、モールという準決勝までのそれとはまるで違った戦い方をしていました。ゲーム主将はヴィクター・マットフィールド。…これを鑑みると、現地でいただいた『ラグビーマガジン ラグビーワールドカップ日本代表激闘号』に書かれた、予選プール初戦で日本代表に敗れた時の描写を思い出します。

『…LOヴィクター・マットフィールドらを含むシニアプレーヤーたちは、「より伝統的な南アのスタイルに戻してプレーするように」というハイネケ・メイヤー監督の指示を無視したのだ』

(Simon BORCHARDT/SA RUGBY文・「暗黒の日」より)

対するアルゼンチン代表は、左右に球を散らして走り合いに持ち込む様相。ここまでのゲームでフィットネスには手応えを掴んでいるでしょう。回して、回すことで、相手の足の泊った終盤に勝負へ…。とは、いきませんでした。特に終盤には南アフリカ代表守備網が整わぬエリアに複数のランナーが反応、一気に前進するのですが、チャンスというチャンスをミスで終わらせます。大きな突破の後に手早く組織を形成していたら、もっと点数は取れたかもしれません。

ノーサイド。23-13で南アフリカ代表が3位になりました。

僕はあと3日で、イングランドを発ちます。

【追記】

実は帰国後、南アフリカ代表のフーリー・デュプレア選手(サントリー所属。この3位決定戦は欠場)にお話を伺っています。上記「暗黒の日」の内容にリンクしていなくもない貴重な証言をいただきました。それは追って、発表させていただきたく存じます。

ジャパンのキャプテンだったリーチ選手は、現在、東芝でプレー中。膝の怪我のため、12月5日の第4節は欠場しています。その歩みについてもまた。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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