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8名のインテルOBに聞く デ・ブール新監督は正しい人選なのか

中村大晃カルチョ・ライター
インテル監督就任が決まったフランク・デ・ブール氏(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

インテルは9日、フランク・デ・ブール監督の就任を発表した。セリエA開幕まで2週間を切ったなかで迎えた新指揮官は、復活を目指すインテルにとって適切な人物なのだろうか。

契約解消で去ることになったロベルト・マンチーニ前監督は、かつてインテルにリーグ優勝3回、コッパ・イタリアとイタリア・スーパーカップ優勝2回のタイトルをもたらした。イタリア人とあり、当然、セリエAを知り尽くしている指揮官だ。

一方のデ・ブール新監督も、アヤックスでリーグ4連覇という偉業を成し遂げた。オランダ・スーパーカップのタイトルも獲得している。だが、オランダ人の同監督には母国以外での指導経験がない。しかも21日の開幕戦はすぐそこだ。このタイミングでの監督交代を疑問視する声もある。

ライバルのナポリやローマが主力を王者ユヴェントスに引き抜かれた一方で、アルゼンチン代表エベル・バネガやイタリア代表アントニオ・カンドレーヴァを獲得したインテルは、チャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得が至上命令。その目標に向け、クラブの人選は正しかったのか。イタリア『コッリエレ・デッロ・スポルト』が、8人のOBに尋ねている。それをご紹介したい(中略あり)。

◆ジャンルカ・パリュウカ

彼はオランダでアヤックスを指揮した。優れた資質があるのは確かだ。時間を与えるべきだろう。特に開幕直前だし、リスキーだ。マンチーニと何かがうまくいっていないのは、すでにみんな分かっていた。もちろん、クラブの身売りも影響しただろう。ベルルスコーニのサッキ登用みたいに、デ・ブール起用が大ヒットする可能性もある。だが、優れたイタリア人指揮官がたくさんいるのも事実だ。例えばプランデッリとかね。

◆アレッサンドロ・アルトベッリ

新参者でないことは確かだ。そうでなければ、アヤックスのようなチームで6年もやっていない。疑問は、イタリアサッカーやインテルの選手たちのことを知っているかどうかだけだ。今回のマーケットで他チームは弱くなったが、インテルは強くなった。CL出場が目標となる。できなければ失敗だ。彼は早く馴染まなければいけない。開幕まで20日しかないんだ。

◆ジュゼッペ・ベルゴミ

私ならマンチーニを最後まで残そうとした。だが、避けられないことだったのなら、改革的な変更は正しい選択だ。彼はインテルに新たなメンタリティーをもたらすだろう。時間がないのは事実だが、チームを組み立てるまでにそうかからないはずだ。選手たちに正しい役割をあてがうことが必要だね。私は、マンチーニとの別れを避けられたはずだと思う。クラブも彼も、それぞれ一歩ずつ譲るべきだった。イタリアはイングランドじゃない。マーケットを管理するのはスポーツディレクターだ。

◆フランチェスコ・モリナーロ

イタリアで指揮を執るのは簡単じゃない。監督はすぐに結果を出さなければいけないんだ。メディア的なストレスも大きい。彼がすぐに溶け込み、うまくやれるように願うよ。開幕直前の監督交代は決して簡単なことじゃないんだ。私なら、マンチーニと前進し、関係修復を図った。一人の監督に賭けるなら、自由に選択させるべきだと思う。何かがうまくいっていないのは明らかだった。だが、別れが避けられなかったのなら、私なら確実にもっと早く変えていたな。

◆ルイジ・シモーニ

オランダでも良い仕事をした指揮官だが、母国から出たことがない。イタリアサッカーに合わせる必要がある。彼のチームは良いプレーをするし、ボールを動かす。だが私は、インテル、特に今のインテルには、まだ早すぎたと思う。正直、私ならもっと経験豊富な指揮官にしたね。

◆タルチージオ・ブルニッチ

どんな監督でも、必要なのはクラブとその監督の間に入る人間だ。こういう状況をコントロールする人間がいなければ、近年のように失敗する恐れがある。デ・ブールは監督としてうまくやってきたし、おそらく優秀だろう。だが、経験豊富でパーソナリティーのある人間が必要だ。インテルに必要なのは、イタリアのリーグを知り、ピッチの外で基準となれる人物だよ。そしておそらく、ピッチの上にもリーダーが必要だ。

◆サンドロ・マッツォーラ

このチームにとって理想的な人に違いないと思う。経験ある指揮官で、欧州を渡り歩いた。新しいことをたくさんもたらせるはずだ。最初はイタリアに慣れなければいけないが、徐々に変えていき、選手たちに彼のメンタリティーを伝えるだろう。外部で見ている限り、マンチーニとのことは限界だったと思う。変えるのが正しかったんだ。私なら、新監督がもっと時間をかけてチームを理解できるように、もっと早くに変えていただろうね。

◆リッカルド・フェッリ

彼はオランダにしかいなかった。クラブが彼を選んだということは、信じているからだろう。私の唯一の疑問は、言葉だよ。彼はイタリア語を話せるのかな。おそらく、少しリスキーな選択だろう。今のインテルにはコミュニケーションが必要だ。チームには競争力がある。必要なのは自信を身につけることだけなんだ。彼の方がイタリアサッカーに適応しなければいけないだろう。イタリアのリーグで自分を出すのは難しい。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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