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爆弾低気圧の暴風は台風より広範囲

饒村曜気象予報士
10月1日9時の予想(左)と2日9時の予想(右)(気象庁HPより)

日本列島は10月1日夜から2日にかけて急速に発達する低気圧(爆弾低気圧)によって大荒れの天気になる恐れがあることから、気象庁では暴風や高波への警戒を呼びかけています。最新の気象情報の入手に努めてください。

「爆弾低気圧」定義

図1 爆弾低気圧の定義
図1 爆弾低気圧の定義

「爆弾低気圧」とは、急速に発達し、熱帯低気圧並みの風雨をもたらす温帯低気圧のことですが、気象庁では戦争をイメージするなどの理由で「急速に発達する低気圧」と表現しています。世界気象機関(WMO)では、北緯60度に温帯低気圧がある場合は24時間に24ヘクトパスカル(hPa)以上、北緯40度の場合は18ヘクトパスカル以上、中心気圧が低下する温帯低気圧を爆弾低気圧と呼んでいます。強い寒気の南下と強い暖気の北上が重なったときに爆弾低気圧が発生します。

季節はずれの爆弾低気圧

日本付近では、世界的に見ても爆弾低気圧の発生が多い地域で、季節的には、冬から春が爆弾低気圧の季節です。10月早々に爆弾低気圧になる(10月1日9時から2日9時までの24時間で44ヘクトパスカル中心気圧が低下する)と予想されているのは、この低気圧がもともとは台風21号から変わった温帯低気圧で、熱帯から大量の暖気を持ち込んでいるためです。

図2 爆弾低気圧になると予想されている低気圧の経路(気象庁HPをもとに作成)
図2 爆弾低気圧になると予想されている低気圧の経路(気象庁HPをもとに作成)

爆弾低気圧は、台風より暴風の範囲が広い

台風も、爆弾低気圧のように気圧が急激に低下して発達することがあります。台風の中には、爆弾低気圧より大きな気圧低下、例えば、24時間に50ヘクトパスカル以上も発達する場合が約1%あります。

しかし、気圧が急激に低下して暴風が強まるといっても、台風の場合、暴風が強まるのは台風の中心付近だけです。しかし、爆弾低気圧は広範囲で暴風が強まり、被害が広範囲に及びます。このため、防災対策は、台風より爆弾低気圧の方が難しいといえます。

爆弾低気圧の暴風を、「台風並みの暴風」と表現することがありますが、「台風以上に危険な暴風」なのです。

「昭和45年1月低気圧」

昭和45年(1970年)1月30日から2月2日にかけて台湾付近で発生した低気圧と、日本海で発生した低気圧が一緒になった低気圧は、24時間に32ヘクトパスカルも気圧が下がるという、爆弾低気圧の中でも強いものでした。東日本・北日本は猛烈な暴風雪や高波に見舞われ、中部地方から北海道にかけて死者・行方不明者25人、住宅被害5, 000棟以上、船舶被害300隻という被害が発生したため、気象庁では、この低気圧を「昭和45年1月低気圧」と命名しました。低気圧で名前がついたのは後にも先にもこれだけです。

参考:元台風21号、「爆弾低気圧」に

図1の出典:饒村曜(2014)、天気と気象100 一生付き合う自然現象を本格解説、オーム社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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