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昔から言われている「雷三日」は上空の寒冷低気圧

饒村曜気象予報士
Thunders in the night(写真:アフロ)

関東甲信地方では7月14日に各地で積乱雲が発達して雷が鳴り、茨城・群馬・栃木・埼玉・千葉・神奈川・山梨・長野の各県と東京都に竜巻注意情報が発表となっています。15日も所により積乱雲が発達して雷が鳴り、千葉県市原市で1時間に約100ミリの記録的短時間大雨情報が発表となっています。

激しい雷雨は熱界雷

雷は、空気中での音と光を伴う放電現象で、強い上昇気流がある積乱雲で生じます。そして、その上昇気流の成因によって熱雷、界雷、渦雷等に分類されます。

1 熱雷は、日射により地表面が熱せられて生じる強い上昇気流により発生し、夜になるとおさまります。雷が午前中に少なく夕方に多いのは、夕方のほうが、空気が熱せられていた時間が長く、その分熱くなり、強い上昇気流が生じやすいためです。

2 界雷は、寒冷渦や寒冷前線通過など、上空に冷たい空気が入ることで発生します。

3 渦雷は、台風や発達した低気圧により発生します。

激しい雷雨は、日射によって強い上昇気流があり、かつ上空に冷たい空気が入っているときに発生します。つまり、熱雷と界雷が複合した熱界雷のときです。

寒冷低気圧

地上天気図は、地上観測を行っている高さの現象を対象としています。地上天気図では穏やかに見えたとしても、気象衛星で観測すると、10キロ上空では、雲が渦をまいているように見えるときがあります。

この渦を寒冷低気圧(寒冷渦)と呼び、天気予報では「上空に寒気を伴った低気圧」といわれています。寒冷低気圧は上空の強い流れ(偏西風)が大きく蛇行し、切り離された場所にできます。寒冷低気圧を動かす上空の風は弱く、動きが遅いという特徴があります。

特に夏に、寒冷低気圧が日本上空を通過すると、寒冷低気圧の下層で日射による強い温度上昇がみられたり、湿った暖気が流入することで、大気が不安定となり積乱雲が発達し、短時間に強雨(雪)や雷、降ひょう、突風などの激しい現象をもたらすことがあります。

寒冷低気圧は、3日程度で日本上空から去る場合が多く、雷が起こりやすい天気も3日程度続くことになります。一般的には、寒冷低気圧の南東側では、下層に暖気が入りやすいので、この傾向が顕著です。

昔から言われている諺の「雷三日」には意味があるのです。

寒冷低気圧が通過

連日の雷は、熱界雷です。上空をゆっくりと寒気低気圧が通過中で、5700メートル上空で、マイナス6度以下の寒気渦です(図)。地上が熱せられて猛暑日の基準となる35度以上になれば、上下の気温差が40度以上にもなります。このため、大気が非常に不安定となり、積乱雲が発達しました。

図 上空約5700メートルの高層天気図における寒冷低気圧の(左は7月14日9時、右は7月15日9時)
図 上空約5700メートルの高層天気図における寒冷低気圧の(左は7月14日9時、右は7月15日9時)

本日も雷となれば、雷が三日連続となりますが、16日は寒冷低気圧が通過後ですので、天気予報では雷がついていません。

16日の天気予報(15日17時発表)

群馬県南部   南東の風 くもり 所により 朝晩 雨

栃木県南部   南東の風 くもり 所により 夜 雨

茨城県北部   北の風 後 東の風 くもり

埼玉県南部   東の風 後 南東の風 くもり 所により 夕方 から 雨

東京都東京地方 北東の風 後 南東の風 くもり

千葉県北西部  北の風 後 南東の風 くもり

神奈川県東部  北東の風 後 南の風 くもり

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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