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空気が半分になる高さが約5キロメートル、そこに氷点下42度

饒村曜気象予報士
船舶の気圧計(ペイレスイメージズ/アフロ)

日本上空には「上空約5キロメートルで氷点下36度以下」という、今冬一番の寒気が南下しています(図1)。

そして、今週末は西高東低の気圧配置のなかで大学入試センター試験が行われます

図1 金曜日(1月13日9時)の予想天気図
図1 金曜日(1月13日9時)の予想天気図

大学入試センター試験が行われる土曜日(14日9時)には、大雪の目安とされる「上空約5キロメートルで氷点下42度以下」の、さらに冷たい寒気が新潟県付近まで南下する見込みです(図2)。

図2 土曜日(1月14日9時)の500ヘクトパスカルにおける気温予想
図2 土曜日(1月14日9時)の500ヘクトパスカルにおける気温予想

このように、気象情報では、寒気を表現するのに、「上空約5キロメートルの高さの気温」を使います。

暴風雪と高波及び大雪に関する全般気象情報 第5号

平成29年1月11日16時33分 気象庁予報部発表

(見出し)

北日本では12日にかけて雪を伴った非常に強い風が吹き、海は大しけとなるでしょう。猛ふぶきや吹きだまりによる交通障害、高波に警戒してください。14日から15日頃には、北日本から西日本の広い範囲で日本海側を中心に大雪のおそれがあります。

(本文)

[気圧配置など]

北日本の上空約5000メートルには氷点下36度以下の寒気が流入しており、日本付近は北日本を中心とした強い冬型の気圧配置が12日にかけて続きます。13日も冬型気圧配置が続きます。また、14日から15日頃には、東日本から西日本にも強い寒気が流れ込み、冬型の気圧配置はさらに強まる見込みです。

出典:気象庁予報部発表の全般気象情報第5号

気象情報でよく使う上空約5キロ

天気予報などを行うときは、上空の天気図を何枚も使って立体的に天気を考えますが、そのときに用いる高層天気図は、高さが一定の等高度面天気図ではなく、気圧が一定の等気圧面天気図を用いています。

等高度面天気図で気温が下がっても、寒気が入っている場合だけでなく、気圧が低くなる場合も含まれています。

しかし、等気圧面天気図で気温が下がった場合は、寒気が入っています。

このため、5キロメートルの高さにおける高層天気図ではなく、500ヘクトパスカルになる高さにおける高層天気図が使われているのです。

地上気圧は、高気圧や低気圧がありますが、ほとんど980ヘクトパスカルと1020パスカルの間にあり、おおよそ1000ヘクトパスカルです。

そして、上空にゆくほど気圧が低くなり、500ヘクトパスカルの高さは、大気が半分になる高さ、大気の中間の高さということになります。

このため、500ヘクトパスカルの高層天気図は、大気全体の動きや温度変化を見るのに適していることから、よく使われ、気象情報にも、この高層天気図の温度が使われます。

ただ、「気圧が500ヘクトパスカルになる高さ」では、一般的にはわかりづらいので、気象情報では「上空約5キロメートル」と言い換えているだけです。

5キロ上がるごとに空気半分

表 標準大気における気圧の高度分布(「理科年表」より抜粋)
表 標準大気における気圧の高度分布(「理科年表」より抜粋)

大気は多少の差があるのですが、標準大気と呼ばれているものは、表のように、おおよそ、5キロメートルごとに半分になっています。

地球の直径は1万2742キロメートルですが、この1パーセント以下の10キロメートルで、大気は8分の1になっています。つまり、地球の大気は、地表近くの非常に薄い層です。

この非常に薄い層のなかで様々な大気現象がおき、その中で、私たちが生活しています。

そして、受験生は様々な大気現象の中で、同じ試験問題に取り組みます。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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