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アンサンブル予報による今週末の寒気と月末の寒気

饒村曜気象予報士
除雪車(ペイレスイメージズ/アフロ)

今冬の始まりは「記録的な大雪と寒さになった三八豪雪」の始まりに似ていました

11月に東京で初雪があり、北海道で大雪になるなど、三八豪雪の再来が懸念されていましたが、気象庁が去年12月29日に発表した1ヶ月予報では、暖かい1月というものでした。

予報期間の前半は、予報通り、ほとんどの地方で穏やかな年末年始となりました。

しかし、予報期間の後半は、予報と違い、強い寒気が南下し、寒くなりそうです。

新しい一ヶ月予報

気象庁が1月12日に発表した一ヶ月予報では、今週末に強い寒気が入り、ほぼ平年並の沖縄を除いて寒くなり、その後気温が上がるものの、月末には再び強い寒気が入って北日本を中心に寒気が入って寒くなる予報です。

図1 一ヶ月予報(1月12日気象庁予報部発表)
図1 一ヶ月予報(1月12日気象庁予報部発表)

気象庁は、一ヶ月予報の発表に伴い、専門家向けに様々な予報図を提供していますが、その中には、イメージがつかみやすいものもあります。

例えば、850ヘクトパスカルの高さにおける気温のアンサンブル予報図です。

アンサンブル予報

アンサンブル予報は、わずかに異なる複数の数値予報を行い、その結果を統計的に処理して確率的な予測を可能にするものです。1か月予報では50例の計算を行い、その結果を統計的に処理しています。

複数の数値予報の結果を平均ることで、予測の不確実性が高い部分同士が打ち消しあい、の予測精度を上げることができます。 また、それぞれが同じような状態を予測していれば、その状態が発生する可能性が高いと判断でき、逆にぞれぞれがバラバラの状態を予測していれば、予測精度が低いと言えます。

また、850ヘクトパスカルの高さとは、気圧が850ヘクトパスカルになる高さのことで、地上約1500メートルです。地上付近の気温ではありませんが、地上付近の平均的な気温変化と対応がよいので、よく使われます。

今週末の厳しい寒さは確度が高い

北日本では、今週末は気温が低くなる(マイナスになる)という予報が揃っています。このため、この寒いという予報は信頼度が高い予報と考えられます。

20日頃には平年並になりますが、月末から2月の初めにかけては気温が低くなります。ただ、ばらつきは大きく、信頼度はやや低い予報と考えられます。

図2 北日本と東日本の一ヶ月予報
図2 北日本と東日本の一ヶ月予報

また、東日本でも、今週末は気温が低くなる、それも北日本より大きく低くなるという予報が揃っています。このため、この寒いという予報は信頼度が高い予報と考えられます。

20日頃以降は平年並になりますが、その後は、平均すれば平年並ですが、予報が揃っていません。信頼度が低い予報と考えられます。

さらに、西日本では、今週末は気温が低くなるという予報が揃っています。このため、この寒いという予報は信頼度が高い予報と考えられますが、1月下旬以降は平年よりやや高くなります。

図3 西日本と沖縄の一ヶ月予報
図3 西日本と沖縄の一ヶ月予報

これに対し、沖縄では、今週末は気温がやや低くなる程度で、1月下旬は気温が平年より高くなるという予報です。

一ヶ月予報の前半は、かなりの予報精度がある時代となってきました。

気象庁では、一ヶ月予報を毎週木曜日に発表していますので、木曜日に最新の予報をチェックすれば、効果的に一ヶ月予報が利用できます。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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