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カープが優勝する2015年のプロ野球が開幕する〈前編:投手〉

松谷創一郎ジャーナリスト

鯉に恋する季節到来

みなさん、恋してますか? 私は年中、してます。

さて、いよいよ今シーズンのプロ野球が開幕しようとしています。そのなかでもっとも注目されるのは、やはり広島東洋カープでしょう。昨年も9月中旬まで優勝争いに加わった戦力は、黒田博樹の加入などによりさらにパワーアップし、十分に優勝を狙える位置にあります。実際、セ・リーグの優勝候補の筆頭に挙げる評論家も少なくありません。

今回は、そんなカープの戦力を丁寧におさらいし、優勝への道筋を確認してみたいと思います。まずは投手陣から。

投手編:先発編

おそらくカープの先発陣は、12球団でもっとも充実しているといえるでしょう。

やはり黒田博樹の復帰は大きいのです。MLB(メジャーリーグ)通算7年で79勝、防御率は3.45の記録を引っさげて日本に帰ってきました。オープン戦では3試合に先発し、17回1/3を投げて自責点2、防御率1.04という見事な成績です。そこで目を見張ったのは球数の少なさでした。ベース上で微妙に変化するツーシームで、ストライクを先行しゴロアウトを築き上げたのです。40歳という年齢に不安もありますが、10勝以上、防御率2点台が期待されます。

一方、カープのみならず球界のエースと言えばマエケンこと前田健太。昨年は彼にしてみれば不調で、ポスティングシステムを使ってのMLB移籍も見送られることとなりました。カープ優勝は、やはりマエケンしだいということになるでしょう。ただ、不調と言っても昨年は11勝で防御率は2.60。今年も、黒田とともにダブルエースとして活躍してくれるでしょう。

さらにカープの安定した先発陣として、昨年新人王に輝いた大瀬良大地、3年前の新人王である野村祐輔が挙げられます。なかでも大瀬良は、黒田直伝のツーシームを習得したことでピッチングの幅が広がりました。野村祐輔は昨年ぱっとしませんでしたが、オフにかなり身体を絞り復活の気配が漂っています。もともと球威はなく制球で勝負する投手なので、それさえ戻ってくれば安心です。

さて、昨年の先発陣から抜けたのは過去4年間で40勝をあげたバリントン(オリックスへ移籍)ですが、その代わりに獲得したのがクリス・ジョンソンです。30歳の左腕ですが、オープン戦でも安定した成績を残しました。クイックに難があるようですが、左投手なのでそれほど大きな問題にはならないのではないかと思います。バリントンの穴は十分に埋めることができそうです。

カープのこの5人の先発陣は、盤石といっていいメンバーです。問題なのは6人目でしょうか。開幕時にここに収まったのが福井優也です。福井は、斎藤佑樹(日本ハム)と大石達也(西武)ともに早稲田三羽烏と言われ、2011年にドラフト1位で入団して一年目には一年間ローテーションを守って8勝をあげました。そこから伸び悩みましたが、今年は飛躍の年にしてほしいものです。球威はあるもののコントロールにばらつきがあり、非常に波のある投手です。その姿が若いころの黒田を思い起こさせたりもします。

もうひとり先発の枠を争うのが、昨年のドラフト2位の九里亜蓮です。昨年は開幕からローテーション入りし、開幕2戦目に初登板初勝利しましたが、最終的には2勝止まり。身体が大きいわりには変化球で勝負する軟投型の投手ですが、バッターに向かっていく姿勢にはいいものがあります。今年は中継ぎからのスタートですが、福井の調子しだいではすぐにローテーションの一角を担うことになるでしょう。

今年のカープはこの7人の先発陣をやりくりして1年を戦うことになりますが、もうひとり左腕の戸田隆矢が控えています。昨年は中継ぎとして活躍しましたが、やはり彼は先発候補。今年はオープン戦で結果を出すことができずに2軍からのスタートです。

それにしても、この先発陣は充実しています。もちろん1年間通してこの全員が活躍することは考えにくいですが、前田・黒田・大瀬良・ジョンソン・野村の5人にバックアップ3人となると、先発陣にかんしてはかなり盤石かと思います。少なくとも早々に試合が壊れることは少ないでしょう。

投手:中継ぎ・抑え編

昨シーズン前半のカープを引っ張っていたのは、充実した中継ぎ陣でした。永川・中田廉・一岡からミコライオに繋ぐこの流れによって、6回までリードしていればかなりの確率で勝利を確信できたのです。しかしそれに変化が訪れたのは、夏になって一岡が離脱してから。永川や中田廉も打ち込まれるようになり、チームも低迷していきました。

今シーズンもカープに弱点があるとしたらこの中継ぎです。中田廉は故障でちょっと出遅れており(5月には復帰できそうです)、開幕時は勝ちゲームならば永川勝浩-中崎翔太-一岡竜司と繋ぐ展開になると思われます。またロサリオの調整遅れ(虫垂炎)により、開幕時はマイク・ザガースキーが登録されています。昨年引退した里崎似なので“サトーザキー”などと呼ばれている太っちょ左腕が、ロサリオ復帰までどれほど結果を残すか注目です。

なお、中継ぎとしては、他にも今井啓介九里亜蓮が登録されています。このふたりはもともと先発投手なので、ロングリリーフ担当ということになります(おそらく2節目で今井は降格すると思われます)。他にも、昨年活躍した中田廉や元日本代表の今村猛、そして新人の飯田哲矢江草仁貴西原圭大などが2軍に控えますが、全体的に手薄な印象は拭えません。

抑えにも不安がないわけではありません。今年クローザーを任されるのは、昨年途中から加入したデュアンテ・ヒースです。昨年は先発として結果を残し、CSでは中継ぎをしましたが、その成績は申し分ないものでした。今年はミコライオの代わりに抑えとしてスタートしますが、ソフトバンクとのオープン戦では一度炎上しサヨナラ負けを喫しました。正直、クローザーとしての能力は未知数と言わざるを得ません。

もしヒースが早い段階で何度も抑えに失敗すれば、一岡にバトンタッチする可能性もあります。また、江夏豊さんは抑え候補として福井を挙げていましたが、その手も面白いと思います。

投手編総括

こうして見てきたカープの投手陣ですが、中継ぎと抑えに不安は残るものの強力な先発陣によって全体的にはとても充実していることは間違いないでしょう。問題となる中継ぎと抑えも、若い投手が多く昨年の経験もあるのでそれほどひどくならないと予想されます。つまり昨年の交流戦や終盤のような失速はないと思われるのです。結論を言えば、やはりこの投手陣は12球団でトップクラスと言えるでしょう。

こうした投手陣を広島で広く親しまれている成績予想方式・ANIYA算によって計算してみますと、以下のようになります。

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年間を通して95勝、やはりぶっちぎりの優勝は間違いないのです。

後編・野手に続く】

ジャーナリスト

まつたにそういちろう/1974年生まれ、広島市出身。専門は文化社会学、社会情報学。映画、音楽、テレビ、ファッション、スポーツ、社会現象、ネットなど、文化やメディアについて執筆。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(2017年)、『文化社会学の視座』(2008年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)など。現在、NHKラジオ第1『Nらじ』にレギュラー出演中。中央大学大学院文学研究科社会情報学専攻博士後期課程単位取得退学。 trickflesh@gmail.com

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