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【JAZZ】新たな“視点”に挑む“スペシャル”なコラボ(平井景スペシャル“五重奏団”ツアー)

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
平井景スペシャル“五重奏団”ツアー
平井景スペシャル“五重奏団”ツアー

“ジャズの醍醐味”と言われているライヴの“予習”をやっちゃおうというヴァーチャルな企画“出掛ける前からジャズ気分”。今回は、平井景スペシャル“五重奏団”のスペシャルなツアー。

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ドラマー、そして作曲家、プロデューサーというマルチな才能を発揮して日本のポピュラー音楽シーンを牽引する平井景。彼が、共演者と観客とともに“スペシャルな時間を共有したい”という熱意をもって主催しているのが“平井景スペシャル”だ。

1991年以来数百のリーダー・セッションを重ねている彼が、今年になって立ち上げたのがヴァイオリンとチェロを加えた“五重奏団”。

編成のユニークさと彼の楽曲とのマッチングに惹かれて、すでに6月と7月のステージを観るために出掛けたことは、当欄でもお伝えしたとおり。

出掛ける前からジャズ気分:平井景スペシャル“五重奏団”@モーション・ブルー・ヨコハマ

http://bylines.news.yahoo.co.jp/tomizawaeichi/20140531-00035853/

出掛ける前からジャズ気分:平井景スペシャル 〜初夏の特別編成“五重奏団”〜

http://bylines.news.yahoo.co.jp/tomizawaeichi/20140709-00037222/

それなのに日を置かずまた観に行くことにしたのは、この東京・名古屋・奈良で行なわれる3日間のミニ・ツアーに、新たな“スペシャル”が加わっているから。

サブ・タイトルにfeaturing “天空の旅人”とあるように、今回のツアーではゲストがフィーチャリングされている。それもミュージシャンではない人なのだ。

多胡光純は大学在学中から世界の辺境に出掛け、卒業後もアルバイトをしながら旅をする生活のなかで“撮影”という表現手段に出逢う。2002年からモーターパラグライダーでの空撮を始め、2003年にカヌーとモーターパラグライダーを組み合わせた“マッケンジー河漕飛行”で注目を浴びて以降、“天空の旅人”としての活動を続けている。

当夜は、多胡光純の映像と“五重奏団”のサウンドのコラボレーションが展開される予定。

このコラボレーションの理由について、平井景からコメントをもらっているので紹介しよう。

平井景:私は自然の風景やストーリー性をかなりイメージして曲を書いています。

「SORA」というソロアルバムのタイトルチューンのように、空や月、海、、などをテーマにした曲も多いです。

私の曲から映像が浮かぶ、とよく感想をいただきますが、そのようにイメージして作曲しているので、嬉しいことです。

この五重奏団を立ち上げるにあたり、「Foresta」という森の上空を飛んだり、森のなかに突っ込んで、また飛びぬけたりといった、まさに“空撮”のイメージで曲を書きました。

期せずして、「天空の旅人」と出会いました。多胡さんはCD「SORA」もよく聴いていて、それをイメージして飛んだりもするそうです。

SORAつながりで、多胡さんとなにかできないかと思いました。

彼も、音楽のマジックに気付き始めているようで、いずれは共同作品へ展開できればと話しています。

まずは、私の音楽に実際に映像を添えてもらって、ということから始めようというのが、今回の企画です。

彼の映像からインスパイアされた音楽も、作ろうと思っています。

コンサート前半は、ばっちり、五重奏団だけのライブを楽しんでもらって、後半は、多胡さんにも登場してもらい、撮影の苦労話なども写真を見ながらトークします。

平井景が“五重奏団”に託したイメージが、多胡光純の映像と共振して引き寄せあったとしか思えないようなエピソードではないだろうか。

そんな強い“引き寄せ”のパワーをもった“五重奏団”について、平井景はこのように語っている。

平井景:ピアノトリオは、演奏の自由度が大きく、究極の形態として、演奏者としてはとても楽しめるものだと思っています。

一方で、私の曲はメロディの比重が大きく、メロディを担当する楽器を増やすことは効果的だと考えました。

ヴァイオリンにお願いしようと思ったのは、ヴァイオリンが私のメロディを膨らませるのにとても合っていると思ったからです。伸びやかで、上品で、情熱的。楽曲がジャズというよりクラシカルなムードを求めていることも理由のひとつです。

さらに、メロディとベーシックな部分のあいだを縫うような、もうひとつのメロディが聴こえることも多いので、これを表現するためにチェロを加えました。

この編成は、“ピアノトリオ+メロディをハモれるフロント2人”とも考えられるし、また“バイオリン+チェロ+コントラバスの三声の動きにドラムが躍動感を与えピアノが自由に飛び回る”とも考えられます。

メンバーそれぞれがその場面ごとに役割や立ち位置を変えて演奏できるという自由度も、この編成ならではのものです。人数と自由度は比例しませんので、アドリブ感やライブ感を出しつつ贅沢なサウンドを実現するには、この楽器の構成と5人という編成がちょうどいいかと思っています。

この“五重奏団”では、全体で丸くひとつの印象になることを重視しています。バランスを重視しながら、誰かの突出したキャラクターに頼るのではなく、“五重奏団”としての個性をめざしたいと思っています。

平井景の発言には、メロディからアンサンブルを膨らませてバランスをとろうとする作曲家ならではの視点で考え、そこにジャズならではの自由度をどう活かしていくかというジャズ・ミュージシャンならではの意欲を織り込もうとしているように感じる。

多胡光純の“空撮”というアプローチからもまた、撮影者である自身の存在感を消して、自然とのバランスのなかで“バーズ・アイ”というポジションを借りながら、人間がそれまで見たことのない風景を求めて“攻め入っていこう”という意欲が伝わってくる。

出逢うべくして出逢った“五重奏団”と“天空の旅人”、未知なるサウンドを求める旅立ちを見逃すわけにはいかない。

では、行ってきます!

●公演概要

平井景スペシャル“五重奏団”

〜featuring “天空の旅人”Teruyoshi Tago

11月13日(木) 開場18:30/開演19:30

会場:[http:// SARAVAH東京](渋谷)

11月15日(土) 開場18:30/開演19:30

会場:The Bottom Line Japan(名古屋・今池)

11月16日(日) 開場17:00/開演17:30

会場:学園前ホール(奈良市)

出演:帆足彩(ヴァイオリン)、平山織絵(チェロ)、木原健太郎(ピアノ)、嶌田憲二(ベース)、平井景(ドラム)、スペシャル・ゲスト:多胡光純(モーターパラグライダー空撮)

♪Foresta / Kay Hirai "The Quintet"_平井景スペシャル"五重奏団"

♪GLOBAL WORK(グローバルワーク)『世界人』#002 多胡光純

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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