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いじめを減らす方法:「いじめ許容空間」を作らせるな!:いじめ防止法成立を受けて

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
phtoAC

いじめ防止対策推進法

いじめを防止するための法律(いじめ防止対策推進法)ができました。

簡単に言えば、刑法では問題にされないようないじめも含めて、いじめは悪いことだ、防止しようと、定められたわけです。

いじめ防止対策推進法でいじめは防げるか THE PAGE

いじめ防止対策推進法でいじめは防げるか Yahoo!ニュース

たとえばあいさつをしても誰も返事をしてくれないというのは、どんな刑法に触れるでしょうか。いじめイコール犯罪ではないのです。それが今回の法律を通して、いじめはどのようなことでも悪いことだとされました。

出典:THE PAGE「いじめ防止対策推進法でいじめは防げるか」(碓井真史)

法律ができたことは大きな一歩だとする意見がある一方、法律ができてもいじめは減らないという意見や、法律自体の問題を指摘する声もあります。

現代型のいじめの特徴

昔のいじめは、ジャイアンのような子が、のび太のような子をいじめていました。しずかちゃんや出木杉くんのような子は、いじめられませんし、いじめを止める正義の味方にもなれました。

でも、現代のいじめでは、誰もがいじめられる可能性があります。誰もがいじめられることを恐れています。だから、誰も正義の味方になれないのです。

いじめが起きるのは

いじめ問題の根本は、人間関係の不安です。人間関係に不安を持っているからこそ、満たされない権力欲、傷つきやすい自己愛、肥大した自我、劣等感、わがまま、未学習、ストレス発散、自己嫌悪感などが、いじめ衝動へとつながります。

しかし、「いじめたい」と感じただけでは継続的ないじめは起こりません。ご飯が食べたいと思えば、いつでもどこでもご飯を食べるかと言えば、そんなことはないでしょう。ご飯を食べてもよい場所で、ご飯を食べるのです。

私がゴミを捨てたいと思い、室内にゴミを放り投げたとしましょう。正義の味方が叱ってくれれば、私はそれ以上捨てません。正義の味方がいなくても、みんなに非難の目で見られれば、それ以上ゴミを捨てないでしょう。

ところが、みんなが「見て見ぬふり」をしたとしましょう。私は、2個目のゴミも捨てます。3個目のゴミも捨てます。すると、調子に乗る人間が出てきて、その人達もゴミを捨て始めます。しだいに、部屋がゴミだらけになっていきます。そうすると、普通の人もゴミを室内に捨てるようになります。

そうして、ほとんどの人がゴミを放り投げるようになれば、まじめにゴミ箱までゴミを持って行くのが、辛くなってしまいます。みんなに仲間はずれにされないようにと思えば、本意ではないけれど、ゴミを放り投げるようになるでしょう。こうして、ゴミ捨て許容環境ができあがります。

いじめを見て見ぬふりする大勢の傍観者によって、いじめ許容環境ができあがります。いじめ衝動と、いじめ許容環境によって、いじめは起きるのです。

いじめは悪いこと

今までも、全国の学校で「いじめ撲滅運動」などが行われてきました。生徒達が、様々な工夫をして、いじめ問題に取り組みます。その一つ一つは仮に稚拙なものだとしても、学校みんなで取り組むことによって、いじめはだめだ、いじめは許されないという雰囲気が作られていきます。

もちろん、それでいじめが0になるわけではありませんけれども、いじめ許容環境を広げないことはとても大切です。

いじめ防止対策推進法の意義

新しく成立した法律によって、いじめはだめだという雰囲気を広げたいと思います。子どもは大人の縮図です。社会全体が毅然としていじめと立ち向かう姿勢をとることで、子ども達もいじめ撲滅の雰囲気を作りやすくなります。

いじめ防止対策推進法は、たいした効果がなく、かえって仕事が増えるだけと考える人もいるかもしれません。しかし、その考え方自体が、うっかりすればいじめを後押ししてしまいます。

まず、私たち大人自身が法律成立と共に、本気の態度を示すことでしょう。子ども達は、大人を見ているのです。

→さらに読む。

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出典:THE PAGE「いじめ防止対策推進法でいじめは防げるか」(碓井真史)

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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