愛媛・伊予市女性遺体事件:たまり場・居場所の心理学:少年少女を守るために
■愛媛・伊予市女性遺体事件・少女遺体発見場所は「少年のたまり場」
被害者少女は、自宅から出ていたようです。事件現場となった部屋は、多くの少年達のたまり場となり、トラブルが多発していました。被害者少女への暴力を目撃していた人もいました。警察にも情報は行っていました。
■なぜ逃げなかったのか
死に至るほどの暴力を受けながら、なぜ逃げなかったのか。鎖で繋がれていなかったのに、なぜ逃げなかったのか。疑問に感じる人もいるでしょう。でも、おそらく少女は逃げなかったのではなく逃げられなかったのです(ネットと世間に流れる「少女はなぜ逃げなかったか」に答える)。
今回のケースは、まず「逃げる場所」がなかったのではないかと思います。家族は、捜索願いを出し少女のことを探していたのですが、彼女は家には帰れないと思いこんでいたかもしれません。
家庭以外にも、警察や、信頼できる友人宅や親戚宅など、本当はどこかに逃げ場所はあったのでしょうが、少女の心の世界では、逃げ場所がない、ここにいるしかないと、思っていたのかもしれません。
また、世の中には、人を支配するのが得意な人がいます。彼らは、洗脳やマインドコントロールを使うカルトのように、人を支配する様々な方法を使います。
激しい暴力、気まぐれな優しさ、細かいルールを守らせる、独自のルールや価値観でしばる、健康を奪う。このような状況で、人の心は縛られて、逃げられなくなるのです。
逃げられるのは、逃げ場所があり、心と体の健康が保たれている人なのです。
■たまり場・居場所
家庭にも、学校にも、職場にも、「居場所」がないと感じている青少年達がいます。居場所がなくなるとき、人の心は不安定になります。不安定なまま、「たまり場」を探し出します。
何となく無職青年らが集まることもあれば、悪意を持った大人が彼らを集め、ルール違反を許したり、少年達を悪用したりしようとする場合もあります。
たまり場は、周辺住民の人々から見れば、異様で怖い集団に見えますが、そのように見られることがさらに、たまり場に集まる人々の凝集性を高めます。
自分たちだけで集まり、周囲を敵視し、独自の価値観で動くサブカルチャーが作られることもあります。
私たちにとっては、小さくても、自分の周りが「世界」になってしまいます。子どもにとっては学校のクラスが、社会人に取っては職場が、主婦や幼い子どもにとっては家庭が、その人にとっての「世界」なのです。
そこから一歩外に出れば、救いや別の価値観があるのですが、見えなくなります。その集団が良い集団なら良いのですが、いじめや非行の世界に飲み込まれる人もいるでしょう。
■少年少女を守るために
問題は多発しているのに、なかなか対応できないことが多いでしょう。家庭、学校、自治会、町内会、児童相談所、市役所、警察など、一つの組織の力では太刀打ちできないかもしれません。
不幸な犯罪を起こさないために、あるいは本当はSOSを出している少年少女を守るために、大人たちの連携が必要ではないでしょうか。
青年たちは、大人に反発するものです。社会のルールを破っている青少年は、甘やかさず制裁を加えることも必要でしょう。しかし、彼らには居場所が必要です。
悪の居場所ではなく、彼らに未来を与える居場所が必要です。彼らにとって、周囲の人々はうるさい存在かもしれませんが、「敵」になってはいけないと思います。
家を飛び出すこともあるかもしれません。大げんかをすることもあるかもしれません。それでも、最後には帰れる居場所を、子どもたちのために作れればと思います。