2か月間の暫定的な資格停止処分「選手にも責任はある」 ヨーハウグ選手は無実を証明する覚悟
19日、アンチ・ドーピング・ノルウェー機構は、禁止薬物陽性反応を示したクロスカントリースキーのテレーセ・ヨーハウグ選手に対する、暫定的な処罰を発表した。
10月19日より、12月18日までの2か月間、同選手は資格停止処分となる。プレスリリースによると、この期間は大会競技や組織化されたトレーニングには参加できないこととなった。この処分は暫定的なもので、今後最終的な処分が下されることとなる。
ノルウェースキー界の女王が禁止薬物陽性 「私に一切罪はない」と責任否定し、記者会見で号泣
ヨーハウグ選手は、記者会見で、握りしめたこぶしでテーブルをたたきながら、「自分には一切罪はない」と主張していた。チームドクターは、全責任を負って辞職した。
しかし、アンチ・ドーピング機構は、「選手に罪はないとは言い切れない」と、選手の主張には同意できない立場を明確にした。
選手は、弁護士を通して、プレスリリースでこのように回答している。「判断を重く受け止めます。今からは、完全なる自由放免という、最も重要なことに集中していきます。できるだけ早く、この案件が慎重に審査されることを望みます」。
国営放送局によると、選手は抗議せずに、暫定処分を受け止め、最終的な処分結果を待つとしている。現地報道によると、数年間の資格停止処分を受ける可能性がある。
また、日焼けした唇の治療のために、薬を手渡したフレドリック・ベンディクソン医師に対しては、規則違反に該当する可能性が高いとし、別案件として調査を進めていく異例の事態となっている。
スキー連盟の重役は、なぜ辞職しない?
現在は、ヨーハウグ選手と医師に最も注目が集まっているが、ノルウェー・スキー連盟のロステ会長に現地メディアが厳しい質問を投げかけ始めた。
責任者として辞職はしないのかという問いに対し、「我々は今、最も過酷な局面にたっています。今日、関係者と電話で話しましたが、後押しするという声をいただきました。安定した、よいリーダーシップが必要とされています。私は選ばれ、団体から信用をえています」。
「では、あなたはどういう形で責任をとられるのですか?」という質問が国営放送局から投げかけられた。「必要な対策が実行されるという形で、我々は責任をとります」と会長は答える。
1人目のスンビー選手のぜんそく治療薬で薬物陽性騒動では、会長は、「事の発端は、わかりにくいWADAの規則にある」とWADAを批判した。
ナショナルチームのチーフであるロフスフース氏は、TV2に対して、「誰に責任があるか」の議論には自身はコメントしないと返答。「自身のポジションについては、毎日自問自答しています。去るように言われたら、もちろんそうします。ただし、現時点では、内部からは支持する声をいただいています」。
もう一人のスキー女王であるビョルゲン選手は、「ショナルチーム全体でヨーハウグ選手を支える」と記者会見でコメントしていた。組織内部では互いを守りあう空気が生まれているようで、ノルウェー国内の世論も、「かわいそうな」ヨーハウグ選手を今もかばう傾向がある。
この日の現地報道でも、「ヨーハウグは自滅してしまうのでは」という番組司会者の質問に対し、スポーツコメンテーターが、「彼女は強い選手なので、必ずすごいカムバックをするでしょう!」と言うシーンがあった。
ノルウェーが、スポーツの国際市場で唯一金メダルを量産できるクロスカントリースキー界。国家全体でひとつのスポーツを応援する姿勢は目を見張るものがあるが、本気で反省をしないと、あらたな次の陽性反応選手がでてしまうのではないだろうか。
Photo&Text: Asaki Abumi