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就活相談2・エントリーシートがうまく書けない

石渡嶺司大学ジャーナリスト

エントリーシート、書けることがありません。マニュアル本を読むとすごい学生の話ばかりです。自分なんか、そう大した学生生活を送ってきたわけでなく、負けてしまったなと思います。いっそ、盛りまくろうかと思いますが、それでも正直に書いた方がいいのでしょうか?

エントリーシートで質問です。内定が取れる学生とそうでない学生との違いはどこにあるのでしょうか?

「どこ情報~?」って某CMではなくて(苦笑)

今回から、記事内容とは無関係に写真を入れることにした石渡です、こんにちは。

今回の写真は先日訪問した、九州産業大学キャリア支援センターのジュニアアドバイザーコーナーのホワイトボードのイラスト。

なかなかの力作です。

このコラムを読んでくれている就活生の方も

「進撃の就活」

となりますように。

さて、ぼちぼち2月も近づき、エントリーシート関連の質問が増えてきました。

「どこ情報~?」

と某ナビCM(コケたせいか、最近聞きませんなあ)のように聞かれたら、

「そりゃ、採用担当者とか大学職員、学生など色々」

と面白くもなんともない返しで話を進めていきます。

エントリーシートは正直、わかりやすくが基本

今回のご質問のポイントは

「すごい学生でないからエントリーシートがうまく書けない。盛った方がいいかどうか」

「内定が取れる学生とそうでない学生のエントリーシートはどう違うか?」

の2点。

まず、前者から行きますが、前提条件として、エントリーシート・履歴書で、大げさに書く、あるいは本当でもないけどウソでもないぎりぎりのところを書くことを「盛る」と言います。

この「盛る」、以前にも書きましたが基本的にアウト。

※こちらを参考にどうぞ。

就活の「盛る」、境界線は?

エントリーシートにしろ、面接にしろ、

正直、わかりやすく(面接担当者の社会人にとって)

が基本。

という話をすると、多くの学生(自称・普通の学生)は一斉に反論してきます。

「そんなこと言ったって、マニュアル本にすごい学生の話しか書いていないじゃないか」

「即戦力とかすごい学生とか意識高い学生などを企業が求めている、とよく聞きますけど」

確かに。

マニュアル本にはすごい学生の話しか出ていません。

就活の論客には、いまだに、即戦力志向だのすごい学生がいいだの、意識高い学生が求められているだのと言っている方がいますが、

ため息が出ます(本当は「×っ××すぞこら」くらい言いたいところですがあえて自粛)。

まあ、百歩譲ってそういう企業があることは否定しません。

しかし、新卒採用、特に総合職採用では多くの企業では、即戦力だの意識高いだのすごいだのなんてウソ。

普通の学生こそ、欲しいところなんです。

この話、たぶんまた書きますが、即戦力だなんだと騒ぐ論客って、大体が就活セミナーの運営業者とか学生をあおるだけあおってシメシメとかそういう人ばっかりです。

それか、自社採用で本当に即戦力しかしていない経営者とか。

2つの「学生時代に頑張ったこと」

エントリーシートにつきものの項目と言えば、志望動機、自己PR、それから学生時代に頑張ったこと(ガクチカなんて省略形もありますが~)の3つです。

このガクチカ、次の2つを読んでみてください。

その1:

学生時代に頑張ったことで、特にサークル部長・ゼミ代表・アルバイトの部門リーダーなどリーダーシップ経験があるもの、半年以上の留学、起業経験、ボランティア、資格その他何でもいいが誰に聞いても『それすごいね』と言ってくれそうなものを話しなさい」

その2:

「学生時代に頑張ったことで、もしも大学には行くだけは行って出席はするが勉強をしているわけでなくゼミも出欠をとるものなら出席はするがゼミの他のメンバーと討論するわけでもないしご飯を一緒に行くわけでもないし教員とも特に話さない、それ以外でも大学内でも大学外でも友達もいないし大学教職員とも誰とも話さないし、できるだけ話をしたくない、サークル活動もしないし、アルバイトもしないし、旅行でもボランティアでも特に何もないし、趣味も自己評価においても他者評価においても何もなし、何もないまま大学と自宅を往復するだけの毎日で自宅に帰ってからも家族と何かを話すわけでもなくネットの面白動画検索をしているだけ、親戚付き合いも近所付き合いも含めて他者との関わりが何もないまま大学四年間が終わるという引きこもりに近い学生なら話すことは何もない、というのであれば書けることがないというのも許せるがそうでないなら何でもいいから書いてみてください。というか、うだうだ言わずに書きやがれ」

ああ、長かった。

最強スペックが負け、凡人学生が勝つ理由

先ほどのガクチカ、その1に当てはまる人、はい、手を挙げて~。

…。

はい、まあ、そうそういませんよね。

んじゃ、次。

その2の条件に当てはまる人、はい、手を挙げて~。

これもまあ、そうそういないでしょう。

つまりは、そういうことです。

「学生時代に頑張ったこと」

は、引きこもりに近い学生以外は何でもいいから書け、という条件を省略した形とお考えください。

平凡でもいいから、と断らないのは企業側の不親切とも言えますし、

「それくらい、分かれよ。というか、分かれ」

というメッセージでもあります。

実際、採用担当者などに取材していると、すごい学生の最強スペック(どこそこに留学したとか、起業したとかなんとか)のエントリーシート、一見良さそうに見えるのがボロボロ。

一方、勉強でもサークルでもアルバイトでも、代表・部長でも何でもない、普通の学生のエントリーシート・アピールが受けて内定に至った、という話をよく聞きます。

一番、すごかったのが、

「東南アジアの日系企業で海外インターンを半年、外国人社員の採用業務のアシスタント」

エントリーシートでの受けは抜群。大体の企業は選考まで行きました。

ところが。

面接で話が盛り上がるも、お祈りメールの嵐。

で、結局、この学生がどうしたと思います?

日本に戻ってから、やっていたアルバイト(役職なし)の話をして、その途端に内定が出たそうです。

すごい学生の最強スペックの話って、目立ちます。

それはいいんですが、目立つだけでその学生の人間性までわかるわけではありません。

わからなければ凡人学生の普通のエピソードにも負けてしまうのです。

「低偏差値=就職が悪い」と言われる不思議

なぜ、最強スペック学生が負けて凡人学生が勝つのか?

それはご質問の2番目のポイント、

「内定が取れる学生とそうでない学生のエントリーシートはどう違うか?」

につながります。

内定が取れる学生のエントリーシートは、学生本人の人間性をちゃんと書いているからです。

まあ、このポイント、大方のエントリーシート本は

こう書けば内定が取れる

とか

1行目に印象的な一言を書くべき

とか、あれこれ書くわけですが、結論、そんなのはウソ。

書いただけで内定が取れるマジックワードなんてあるわけがないです。

マジックワードなんてものは仮にあるとしても、「幸運を呼ぶペンダント」、ディスカウントストアの定価の値付けくらい怪しいと思った方がいいでしょう。

1行目に印象的な一言?採用担当者が1日に何枚、エントリーシートを読むと思います?

※数少ないエントリーシート本の良書として『すべらない就活』をお勧めします。この話は

学生を救う答えゼロの就活本でどうぞ。

では、

「人間性をきちんと書く」

とは、どういうことでしょうか?

たとえば、「学生時代に頑張ったことは?」の項目なら、学生時代に頑張ったことを書いて、それで終わらせている、ということです。

これもまあ、

「必ず、自己PRを入れろ」

と言い張るマニュアル本もありますが、どうなんでしょうねえ。

「自己PRの項目がないなら自己PRにつなげるのも多少ならいいのでは」

など、理解を示す採用担当者もいますが、

「自己PRなど、みんな同じ話を書く。それなら、1人1人が違う、学生時代の話を丁寧に書いてほしい」

「そもそも聞いてもいないことをあれこれ書くあたり、人の話を聞けないとすら思えてしまう」

などの意見が多数派。

一方、平凡なエピソードで終わらせるのは、なかなか勇気がいることです。

しかも、それで必ず受かるという保証はありません。

それでも書くだけ書いて、ダメなら次、と割り切った学生が結果的には強くて、内定を取りやすい。

わたしはそのように見ています。

自己評価と他者評価は別

「学生時代に頑張ったこと」で学生本人が大したことない、と思っていたとしても、それは学生本人の思い込みです。

エントリーシートを読んだ企業が大したことない、と思うか、平凡であっても会ってみたいと思うか、それを決めるのはその企業の採用担当者です。

ここで、学生側が

「必ず内定が取れるように」

とか、

「本当に大したことない、と言われて傷付きたくない」

などと思う気持ちはわかります。

でも、それは無理なんです、ごめん(何に誤っているんだ、自分)。

就活はもちろん、社会に出ても、会社員だろうがフリーだろうが何だろうが、常にチヤホヤされるばかりではありません。

非難されることも怒られることもあります。

だけど、世の中、面白いもので、捨てる神あれば拾う神あり。

あいつはダメだ

という人もいれば、

あいつはいい

と思ってくれる人もいるんです。

そして、頑張っていればそれをどこかで見てくれてどこかで評価してくれる人も必ずいます。

エントリーシートの「学生時代に頑張ったこと」はその第一歩。

おっかなびっくりかもしれませんが、きちんと自分のことを書くようにしてみてください。

ご参考までに。

※就活関連の記事については以下の記事もご参考にどうぞ。

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就活の「盛る」、境界線は?

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大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計33冊・66万部。 2024年7月に『夢も金もない高校生が知ると得する進路ガイド』を刊行予定。

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