発生したときから大型の台風23号は、強い台風に発達してから北海道に接近
発生したときから大型の台風23号は、これから強い台風に発達し、加速して北海道に接近します。8日15時すぎから予報円が北海道にかかりますが、この頃から台風の速度が落ちます。あっというまに接近し、その後、なかなか去らないという、速度からみて要警戒台風です。
しかも、強風域が台風の北側850キロメートル、南側650キロメートルもある大型台風です(6日15時現在)。最大1500キロメートルが強風域となりますので、台風が時速50キロメートルで進んだとして最大30時間、強風域の中にいることになります。速度が落ちて25メートルになれば最大60時間とさらに長い時間です。
台風の大きさと強さは気圧で決めていた
気象庁の発表する気象情報や警報では、一つ一つ異なった性質を持っている台風を分類し、「大型で強い台風」や「超大型で猛烈な台風」というように大きさを表現する言葉と、強さを表現する言葉をつけています。
これは、昭和30年代後半から使われ、当時は台風周辺の風の観測が難しかったため、大きさについては主に1000hPa等圧線の半径で分類し、強さについては主に中心気圧を用いて分類してきました(表1)。例外として、1000hPa等圧線が著しく変形している場合や、暴風半径が大きく防災上の問題があるときには風速25メートル毎秒の半径(暴風域)を参考として大きさを決めていました。また、中心気圧が上昇したにもかかわらず、最大風速が変化せず、強さの階級を下げることが防災上好ましくない場合や、実況等で著しく強い風が吹いているときには最大風速を参考にして強さを決めていました。
平成3年から台風の大きさと強さの基準を風で決定
昭和52年(1977年)に静止気象衛星「ひまわり」が打ち上げられ、その利用技術が蓄積されました。そして、平成3年は、「ひまわり」により台風周辺の風を高い精度で解析できるようになったことから、台風の大きさと強さの分類を、それまでの気圧に重点をおいたものから、大きさは平均風速が15メートル毎秒以上の領域(強風域)の半径によって、強さは最大風速によって分類しています。
平成12年から安心感を与える表現は使わない
平成11年8月14日の神奈川県の玄倉川水難事故(死者13名)を契機に、このような表現では、危険性を過小評価した人が被害に遭うおそれがあるとして、気象庁では翌年から一般利用者に安心感を与えないよう、「ごく小さい」「小型」「中型」「弱い」「並の強さ」の表現は使っていません。
台風の大きさと強さから見た台風の一生
一般的には、台風の大きさと強さの分類から見ると、「ごく小さくて弱い」から始まって、大きさと強さのランクを徐々に上げていき、最盛期に達したあとは、大きさと強さのランクを下げます。このとき、台風は弱くなってもなかなか小さくならないという傾向があります。
しかし、台風23号は、まれにみる発生時から大型の台風で、風速が毎秒15メートル以上の強風域が750キロメートルもありました。大型といっても、超大型に近い大きさです。このため、一般的な台風とは違った変化が予想されます。
台風の大きさと強さは人間の身長と体重に相当し、腕力はわからない
台風の大きさと強さを、たとえでいうと、人間の身長と体重に相当しています。身長と体重だけでは、その人の体力がある程度までしかわからないのと同じで、小さな人でも腕力の強い人がいます。
台風の大きさと強さは、あくまで目安であり、これで台風を判断せず、台風情報の中身に注意してください。
表1、図の出典:饒村曜(1986)、台風物語、日本気象協会。
表2、3の出典:饒村曜(2013)、気象災害から学ぶ・台風の大きさと強さ、近代消防12月号、近代消防社。