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台風1号が発生しないまま7月に~統計史上3回目の珍しい現象~

杉江勇次気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
すぐに台風へ発達するような雲はみられない太平洋(気象庁HPより)

台風1号の発生は7月以降にずれ込む

振りかえれば、去年は台風の発生が上半期に非常に多く、6月までに9個の台風が発生していました。

そしてちょうど6月30日に9個目の台風が発生し、その後も立て続けに台風が発生、7月上旬にはトリプル台風が列島へ接近とも騒がれていました。

ところが今年は全く正反対で、6月が終わろうとしているのに台風が1つも発生していません。

気象庁からは6月下旬になり、フィリピン周辺の2つの熱帯低気圧に対して、24時間以内に台風へ発達する見込みという情報も出されましたが、結局予想通りには発達せず、台風1号は発生しないまま6月が終わろうとしています。

(6月23日15時に台風発生予想→25日21時に解除、6月26日15時に台風発生予想→27日21時に解除)

台風の統計は1951年からあり、今年で66年目となりますが、台風1号の発生した遅い日付は以下の通りとなっています。

1位1998年7月09日

2位1973年7月02日

3位1983年6月25日

4位1952年6月10日

5位1984年6月09日

台風1号の発生が7月以降にずれ込んだ年は過去に2回しかなく、今年は3回目の珍しい現象となりそうです。

さらに今のところ、すぐに台風としてまとまりそうな雲は見当たらず、このままいくと1973年7月2日より遅くなるのはもちろん、1998年7月9日よりも遅くなり、統計史上最も遅い台風1号の発生というようなこともあり得る状態です。

ところで、台風1号の発生が7月にずれ込んだ過去2回のその後の台風の状況はどうなのでしょうか?調べて見ると、まるで相反する状態となっていました。

過去2回は全く異なる状況に

気象庁のHPより、月毎の台風発生数、接近数、上陸数の平年値と1998年、1973年のデータを抜粋すると以下の通りとなります。

台風の発生数(気象庁HPより)
台風の発生数(気象庁HPより)
台風の接近数(気象庁HPより)
台風の接近数(気象庁HPより)
台風の上陸数(気象庁HPより)
台風の上陸数(気象庁HPより)

まず1998年は7月9日に台風1号が発生したあとも台風の発生は少なく、7月~12月までに平年よりかなり少ない16個の台風しか発生しませんでした。

しかしその内の8個の台風が列島に接近し、4個の台風が上陸しており、上陸数としては年間の平均を上回っているほどです。

しかもこの4個の台風すべてが大きな被害をもたらしており、言い方は悪いのですが、台風からすれば少数精鋭とも言えるような状態の年でした。

一方、1973年はどうかというと、台風1号が7月2日に発生したあと次々に台風が発生し、7月の発生数は実に7個。

7月から12月までの発生数は21個とほぼ平年並みに発生しました。しかし列島に接近した台風は21個のうち、わずか4個にとどまり、上陸した台風は7月末のわずか1個だけという状態でした。

今後の台風の活動予想は難しい・・・

上記の2年はエルニーニョ現象が春に終わり、一転して夏にラニーニャ現象が発生しているという点で非常によく似ている年なのですが、夏以降の台風に限っては全く正反対の状況とも言える状態で推移していたことが分かります。

今年も春にエルニーニョ現象が終わり、この夏からラニーニャ現象が始まる可能性が高いと予想されており、上記2年と同じような海洋・大気の状態が予想されています。しかし、台風の今後の活動状況、日本付近に与える影響に関しては、上記2年を見る限り、全く予測がつかないと言っても良いのかもしれません。

(気象庁HPよりデータを参考にしています。)

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

人の生活と気象情報というのは切っても切れない関係にあると思います。特に近年は突発的な大雨が増えるなど、気象情報の重要性が更に増してきているのではないでしょうか? 私は1995年に気象予報士を取得しましたが、その後培った経験や知識を交えながら、よりためになる気象情報を発信していきたいと思います。災害につながるような荒天情報はもちろん、桜や紅葉など、レジャーに関わる情報もお伝えしたいと思っています。

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