悪ふざけバイト店員はなぜ続出するのか?:若者の心理とネットコミュニケーションの罠

みんなが、面白さや、騒ぎを求めている…

■今度はステーキ店でアルバイト店員の悪ふざけ投稿写真発覚

~男性アルバイト店員(18)がキッチンの冷凍庫に入り、別のアルバイト店員(18)が写真を撮ってツイッターに掲載していたと明らかにし、ホームページで謝罪した。 ~撮影した店員から「悪ふざけしました」と謝罪の電話があったという。同社は足立梅島店の6日の営業を中止し、冷凍庫内の食材を廃棄。店内を消毒した。営業再開は未定で、店員は解雇する方向。

出典:今度はステーキ店で店員の悪ふざけ写真発覚 スポーツ報知 8月7日(水)

(補足8.12:上記ステーキチェーン店ブロンコビリーは、バイトが問題を起こした同店を閉店、損害賠償請求も検討へ。)

■悪ふざけアルバイト店員投稿事件簿

先月から、アルバイト店員が店内で悪ふざけを行った様子をネット上に投稿し、その結果営業が停止されるなどの問題が次々と起きています。

まず先月報道されたのは、コンビニチェーンの男性アルバイト店員がアイスクリーム用冷凍庫の中に入って横になった画像をフェイスブックに投稿した事件(店内にある透明なふたの着いたアイスクリームケース。寝そべるとちょうど大人一人分の大きさです)。この店は、休業に追い込まれました(本部からフランチャイズ契約打ち切り)。

大手ハンバーガーチェーンでは、男性店員が床に置いたバンズ(ハンバーガー用のパン)の上に寝そべった画像を、「バンズの上に寝そべってみた」というタイトルとともにツイッターで流しました。このバンズは廃棄用ではありましたが、ツイッターは炎上。同社公式ホームページ上で謝罪文掲載の騒ぎとなりました。

フランチャイズ弁当店では、男性店員が冷蔵庫の中にすっぽり入った画像をツイートしました。同店は、衛生状態を確かめるためにいったん休業、店員を規定に基づき処分しました。。

さらに、コンビニ店員がレジカウンターの上に乗って大またを開いたV字開脚をし、股間に商品のバーコードを読み取るバーコードスキャンを当てている写真をツイッター上に投稿。店員は「これやったら店潰れるの?」とつぶやき、これも炎上する事件も起きています。

いずれも、本人は悪ふざけなのでしょうが、冗談ではすまされない事態になってしまいました。

■ジョークとユーモアと悪ふざけ:芸人さんの世界

笑いは、非日常の中で起きます。意外なこと、ちょっとしたルール破りなどは、確かに面白いものです。しかし、普通は限度をわきまえます。ぎりぎりのところで笑いを取るお笑い芸人などは、非常に高度なコミュニケーションを行う、難しい話芸をこなしているのです。

ほめたり、正論を述べるのは誰でもできますが、毒舌なのに問題化せずみんなに愛されるのは、高級テクニックです。

私は、バラエティー番組で毒舌キャラの芸人さんにもお会いしますが、みなさん礼儀正しい方々です。

大学の学園祭で、ある漫才師さんと一緒に舞台に立ったとき、私がボケたので、漫才師さんはどんどんツッコミを入れてきました。学生に大うけしてステージを降りた後、漫才師さんがていねいに言ってきました。「先ほどは、大変失礼いたしました」。これが芸人の世界です。

■なぞかけの心理学

「なぞかけ」の面白さに関する心理学の研究があります(中村太戯留先生「隠喩表現において“おもしろさ”を感じるメカニズム」)

この研究によると、面白くないダメななぞかけは、こんななぞかけです。

・当たり前

・わからない

・笑えない

当たり前すぎたら面白くないし、シュールすぎてわからないのも困る、そして、差別など笑えない内容では楽しめません。

■現代の子ども若者と笑い

騒ぎを起こした悪ふざけ店員たちは、笑いを取ることを狙ったのでしょう。気持ちはわかります。チャレンジ精神は認めます。現代の子ども若者にとって、笑いが取れることはとても価値があります。勉強ができても、スポーツができても、それだけでは不十分。みんなが、「さんま」や「たけし」になろうとしているようです。

ネットで公開された画像は、たしかにインパクトがあります。彼らの狙い通りです。彼らと同じ感性の持ち主なら、大笑いするでしょう。でも、世間の「大人」たちには、「笑えない」内容だったのです。それは、やはりしてはいけない行為だったのです。

■悪ふざけ投稿から考えるインターネットコミュニケーションの特徴:ツイッターは「バカ発見器」?

彼らの行為は、もちろん悪いことです。でも、もしもインターネットがない時代に友人たちの中で行う悪ふざけであれば、少なくとも全国ニュースにはなりません。見つかってひどく叱られても、これほど多くの人に迷惑をかけることはなかったでしょう。

インターネットで情報を公開するのは、新宿の駅前でマイクで話すようなものだと自覚しましょう。ツイッターのフォロアーが数十人の友人だけだったとしても、一度火がつけば、あっという間に情報は拡散します。

自分の個人用ノートの表紙にミッキーマウスの絵を描いてもOKですが、ブログ上で勝手にミッキーマウスの写真を使えば、著作権法違反です。ネットは世界に向けて公開されている場だからです。

ところが、ネットコミュニケーションは、とても開かれた場なのに、とても閉じられた場のような気がしてしまうのが特徴です。まるで、居酒屋で話しているような、トイレや給湯室でおしゃべりしているような感覚です。

そのため、自分のプライバシーを安易に明かしたり、店に芸能人が来たことを話してしまったり、自分の犯罪行為を話してしまうようなことが、次々起きています。特に、フェイスブックや、ツイッターは、気軽に投稿できることが特徴なので、以前のホームページ、ブログ以上に、後先を考えない悪ふざけ投稿をしがちです。大人でも失敗することはありますが、社会経験が浅い若者なら、なおさらでしょう。ツイッターは「バカ発見器」などともいわれるわけです。

人は、インターネットを通して多くの情報を集めたいと思います。同時に、情報発信をしたいと思います。人前で面白いことをしたい人はたくさんいます。交通事故など目撃すれば、家に帰って家族に一生懸命話すでしょう。それが、ネットを使えば、もっと多くの人に情報発信できます。上手くすれば、大勢の人にリツイートされ、山ほどの「いいね」がもらえます。

これは、快感でしょう。人は、表現したがっているからです。でも、これは同時に罠にもなります。すばらしい芸術や、驚くような偶然に出くわせば、ネット上の人気者になれるでしょうが、そうでない人が簡単に「うける」方法のひとつが、「ルール違反」でしょう。ネットの反応が欲しくて、裸になってしまう女性もいます。危険な行為をしてしまう男性もいます。今回の悪ふざけも、その一つだったのでしょう。

■悪ふざけ投稿、これからの対策

若者は、おバカなことをするものです。そういうものです。それでいいと思います。ただ、犯罪行為はもちろんダメです。そうでなくても、本人の予想を超えて悪い影響が広がれば、自分も家族も店も、様々な人が深刻なダメージを受けます。

現代人全体が、以前よりも幼稚化しているように思えます。以前の大学生ならしないような、中学生並みの悪ふざけを、大学生アルバイトがしてしまうこともあるでしょう。本人の自覚が第一ですが、店側の店員教育も、そのつもりで行う必要があるかもしれません。

インターネットはとても便利な道具ですが、同時に危険な道具です。悪ふざけする中学生が、自動車を運転して街に出たらとても危険です。でも、インターネットではそんなことが起きています。

瞬時に世界中の人に情報発信できるとてつもない道具を、私たちは手に入れてしまいました。うっかりすれば、デマの発信源にもなり、犯罪の加害者にも被害者にもなりかねません。だから、交通安全教育が必要なように、ネット安全教育が必要でしょう。

アルバイト経験も、ネットでの情報活用も、自分が成長し、誰かの役に立つようにしていきたい、そのように若者たちを支援していきたいと思います。

■補足2013.8.12

ブロンコビリーがバイト撮影問題を起こした足立梅島店を閉店:産経新聞 8月12日(月)

「すでに解雇したこのアルバイト店員に対して、損害賠償を請求することも検討に入った。」

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インターネットコミュニケーションの心理学:こころの散歩道

青年期の心理:こころの散歩道

インターネットではなぜデマ(流言)が広がるのか:ネットの心理メカニズム:Yahoo!ニュース「碓井真史の心理学でお散歩」

ツイッターやめて「本当に良かった」(品川庄司の庄司智春さん):ネットコミュニケーションの心理:Yahoo!ニュース「碓井真史の心理学でお散歩」]

東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。テレビ新潟番組審議委員。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。HP『こころの散歩道』は総アクセス数5千万。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「とくダネ!」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』など。監修:『よくわかる人間関係の心理学』など。

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