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21世紀の人権を再定義する。

にしゃんた社会学者/タレント
写真 耿念方

21世紀は「人権の世紀」といわれる。年末になると特に、日本のあちこちで「人権尊重」などと書かれた文言を見かける機会が増える。

12月10日が世界人権デーで、この日までの1週間は「人権週間」と定められている。この時期は全国一斉に、人権イベントなどが開催される。私も講演依頼を頂いてよく出かける。

1948年12月10日の「第3回国際連合総会」において、すべての人民とすべての国が達成すべき基本的人権についての「世界人権宣言(Universal Declaration of Human Rights)」が採択された。宣言採択から数えるとすでな70年が超え、人間でいうと成熟した年頃になっている。

戦争の反省を踏まえ、志をもってはじまった人権啓発活動も空しく、今でも日常において人権が侵害されている。命すら簡単に奪われる世の中で、人びとがいがみあい、殺し合い、憎しみの連鎖が一向に消える気配はない。日本でも人権の啓発活動が続けられているにもかかわらず、巷でのヘイトスピーチやインターネット上の差別事案など今までなかった新しい問題まで出てきている。人権感覚を研ぎ澄ますことが、ますます求められる世の中になっているといえる。

私自身も長年、人権活動に取り組んできた1人であるが、その中で強く思うことが一つある。「人権」は次のステージに移行すべく時期に来ているのではないかということである。そうすることによって今まで、長年にわたり努力が続けてきたにも関わらず結果に結びつかなかったことの悩みも、画期的に解消されるのではないかと考える。

皆さんはどうでしょうか?今の「人権」は、ほとんどの社会形成員にとって、どこか他人事になっていたのではないだろうか。イベントなどに集まる大多数に人びとにとっての人権は「自分には関係ない他者のための人権」となっているのではないだろうか。例えば、舞台上で外国人が喋るとなれば、話を聞いている会場の人びとは、外国人のために出来ることを考えていても、そこには多数派に属する自分にとってのメリットは基本的に見出せていない。

自分にはメリットはなく、相手や他者のための人権という意識が、多数派に属する人びとの人権に対する気持ちを義務的にしてしまい、その結果、活動に参加する者の腰を重くさせてしまってはないか。高い志をもって苦労を重ねせっかく開催にたどり着く人権イベントも、来場者、つまり人集めに苦労しているという主催者の嘆きをよく聞く。私たちを人権について考え直す時期にきているのでないだろうか。

誰しもが侵害されてはならない人権があるというメッセージを掲げた今までの人権の取り組み、もちろん今まで同様に引き続き行うことが望ましい。しかし、人権啓発の歴史も成熟した今、そこに留まらず進化する必要が出てきている。つまり新し時代の人権は、「他者のためだけではない」ととらえ直す必要がある。人権は自分のためでもある。いや、むしろ自分のためであると強調すべきである。

ここで改めて新しい時代の「人権」をこの際、再定義したい。

「私たちが、自分がもし合わせていない他人がもつ”ちがい”(境遇や価値観など)を知り、自分の中に取り込むことによって、自分自身が、強く、やさしく、しなやかに、美しく、豊かになるための、人として自分の権利」。それこそが“新”時代の人権なのである。

近江商人が、商いを持続的で、発展的なものにするために「三方よし」を大事にする。人権も「三方よし」でなくてはならないのではないか。「手前よし」、「相手よし」、「世間よし」である必要がある。その解釈で捉えることによってはじめて人権の持続可能と発展可能性が生まれる。繰り返しになるが、人権は自分に幸をもたらすという発想はもっとも大事である。

繰り返しになるが、人権は、私たちをつよく、やさしく、しなやかに、美しくする。いいことずくめである。

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社会学者/タレント

羽衣国際大学 教授。博士(経済学)イギリス連邦の自治領セイロン生まれ。高校生の時に渡日、日本国籍を取得。スリランカ人、教授、タレント、随筆家、落語家、空手家、講演家、子育て父などの顔をもっており、多方面で活動中。「Mr.ダイバーシティ」などと言われることも。現在は主に、大学教授傍ら、メディア出演や講演活動を行う。テレビ•ラジオは情報番組のコメンテーターからバラエティまで幅広く、講演家として全国各地で「違いを楽しみ、力に変える」(多様性と包摂)をテーマとする ダイバーシティ スピーカー (多様性の語り部)として活躍。ボランティアで献血推進活動に積極的である。

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