Yahoo!ニュース

永井一郎さん(波平さん)最後のサザエさんから学ぶこと:伝える・生まれ変わる・変化する

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
「サザエさん展」でサザエさん一家と記念写真

■磯野波平(声優の故永井一郎さん)最後の放送

聞き慣れた「ばっかもーん」の声。サザエさんのお父さん、波平さんといえば、この人の声。磯野波平役の声優、永井一郎さん。1月27日にお亡くなりになりました。

永井一郎さんは1969年の「サザエさん」放送開始から、45年にわたり波平の声を演じ続けてきました。永井一郎さんは、実生活でも、波平さんのような人だったそうです。

永井一郎さんの声による「サザエさん」は、2月9日で最後。波平さんは、今日も元気に新聞を読んでは世の中の不正に怒り、また子供たちを叱りつけています。

最後の放送は、「新聞を読んだタマ」「編み物の季節」「波平、親切騒動」の3本です。

■「新聞を読んだタマ」:伝える:おじいちゃん(波平さん)の真似をするタラちゃん

いつも新聞を読んでいるおじいいちゃん。今日は、ネコのタマまで読んでいます。実は、新聞配達の人に親切にされていたようです。

タラちゃんも負けずに、おじいいちゃんの真似をして読んでいます。これは、心理学的に言えば、「観察学習」。新聞を読みなさいと説教するよりも、新聞を読んでいる姿を子供に見せる方が効果的です。

新聞を読むことだけではなく、挨拶や、社会のマナーなど、波平さんは、無言の内に子供や孫達に大切なことを伝えています。

■「編み物の季節」:毛糸は何度でも生まれ変わる。

サザエさんは、編み物に一生懸命。夕飯は駅弁になってしまいました。でも、マスオさんも、波平さんも、全然怒りません。波平さんは、ただの短気な怒りんぼではないからです。波平さんは、叱り方がわかっています。

編み物をすること自体、そして一生懸命取り組むことは、良いことです。

サザエさんが夢中になって編み物をしているので、波平さんも、ちょっと触ってみました。波平さんは、おじいちゃんですが、子供のような好奇心を失っていません。

サザエさんとフネさんが、古い毛糸のセーターをほどき、新しい編み物をしています。二人は、不思議がっているタラちゃんに説明します。

「毛糸は、何度でも生まれ変わるのよ」。

このセリフは、偶然でしょうが。象徴的ですね。人はだれでもいずれ死にますが、その思いは引き継がれます。

家族それぞれが、手作りのセーターやマフラーをプレゼントされました。手作りって、愛を感じますね。

■波平親切騒動:「人に親切にすることを心がけなさい」:変化する

最後は、磯野波平さんが中心のストーリーです。

ご高齢のご婦人の荷物を持ってあげる波平さん。でもちょっと無理をして、疲れてしまい横になります。このシーンも、偶然でしょうが、象徴的ですね。永井一郎さん、お疲れさまでした。

波平さんは、あちこちで人に親切にしています。この親切は、子供たちにも引き継がれていますね。

ご婦人と一緒に駅まで走ったお父さん。ちょっとドジですが、子供たちは言います。

「お父さんらしい、駅まで、一緒に走るなんて。さすがお父さんと思った。」

波平さんも、家族のみんなも、いろいろとミスをします。けれど、善意で行ったことは、家族みんなが認めるのでしょう。

「カツオも人に親切にすることを心がけなさい」。とお風呂でカツオにお説教です。いえ、私達みんなへのお説教でしょう。

酔っぱらいに親切にするお父さん。また、ちょっと失敗。疲れて帰ってきます。

けれども翌日、世話を焼いてもらった男性が、わざわざお礼に来ました。

良いことをすれば、自分にもきっと良いことがあると、「サザエさん」は私達にメッセージを送ってくれています。

今度は、波平さんは道を教えてあげます。ところが、目印にと教えたものが、変わってしまったり、なくなったりしています。波平さんは、走って行って、教え直しです。

走りながら波平さんが語るこの言葉が、永井一郎さんの最後のセリフになりました。

「うっかり道も教えられんわ」。

この言葉もまた、象徴的です。世の中は変化していきます。激しく変化します。高齢者にはついていけないほどです。でも、波平は立ち止まりません。嘆きません。元気に明るく、ちょっぴりドジで、前に進みます。いつも、波平らしく。

アニメ「サザエさん」は、来週も続きます。

追加情報(2014.1.10)

・永井一郎さんによる最後の波平、1月9日放送「サザエさん」の視聴率は23・7%でした。

・故・永井一郎さんに変わる「サザエさん」波平役は、茶風林(ちゃふうりん)さんに決まりました。「名探偵コナン」の目暮警部役や、「ちびまる子ちゃん」の永沢君役で知られる声優さんです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

○筆者によるテレビ評

日本テレビ「明日、ママがいない」:中止要請ではなくスタッフと子供達への愛を込めて:すべての表現は人を傷つけるけれど

私が体験したテレビのヤラセとガチと演出:「ほこ×たて」番組終了に思う

「あまちゃん」最終回を読み解く:復活の物語・この先へ。

24時間テレビの心理メカニズム:みんなで助け合うために

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

心理学であなたをアシスト!:人間関係がもっと良くなるすてきな方法

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

心理学の知識と技術を知れば、あなたの人間関係はもっと良くなります。ただの気休めではなく、心理学の研究による効果的方法を、心理学博士がわかりやすくご案内します。社会を理解し、自分を理解し、人間関係の問題を解決しましょう。心理学で、あなたが幸福になるお手伝いを。そしてあなた自身も、誰かを助けられます。恋愛、家庭、学校、職場で。あなたは、もっと自由に、もっと楽しく、優しく強く生きていけるのですから。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

碓井真史の最近の記事