LINE活用による上司と部下関係のすれちがい:ネットコミュニケーションの心理
■LINE活用で上司と部下の関係に変化
社内での世代間のすれ違いはいつの時代にもあります。電話、ワープロ、パソコン、携帯、インターネット、スマホ。メール、ツイッター、フェイスブック、そしてLINE。新しい道具が出てくるたびに、また新たなすれ違いも起きます。
ビジネスの場でLINEを活用し始めた話も聞きますが、そうすれば、トラブルの話も出てくるでしょう。
■碓井のコメント
いろいろな話題でコメントを求められます。30分ぐらい話して、数行にまとめられるのが一般的(プロなのでとても適切にまとめてもらえますが)。ここでは、もう少し詳しくお話ししたいと思います。
■ネットコミュニケーション・マナー
手紙や電話のマナーは、時間をかけて作り上げられてきました。でも、ネットコミュニケーションのルールとマナーは、まだまだ過渡期なのでしょう。
手紙は、時候の挨拶から始まります。拝啓、敬具といった言葉を使います。電話では「もしもし」という言葉を使います。では、メールでは? LINEでは?
メールも、パソコンメールでのマナーと携帯メールでのマナー、スタンダードは違うでしょう。
携帯メールに親しんできた若者が、宛名も自分の名前も抜き、「お世話になっております」の挨拶も抜きで、いきなり用件だけ書いたパソコンメールをビジネスの場で送って、注意を受けることもあります。
「顔文字」をどう使うのか、使わないのか。LINEの「スタンプ」をどう使うのか、使わないのか。ビジネス上の手紙とプライベートな手紙は、当然書き方が違いますが、ネットコミュニケーションではどう違うのか。まだ、標準的なルールとマナーはできあがっていません。
■現代社会における上下関係の希薄さ
数十年前なら、子どもは父親に敬語を使っていました。学校の先生に対しても、もちろん敬語です。校長先生に会うときには緊張しました。ところが、今は親子関係も、対教師関係も、とてもフレンドリーです。学生は、大学の教員に対してもフレンドリーですね。
映画スターは、以前は雲の上の存在でしたが、今は親近感を持たせます。政治家も社長も市長も、世間に対しては、親しみやすさを強調したりします。安倍晋三首相は、現役総理として初めてバラエティー(タモリの「笑っていいとも」)に出演しました。偉い人たちが、AKBの恋するフォーチュンクッキーを歌って踊って、その姿をネットで公開したりします。
それは、世界的傾向かもしれませんが、日本では特に目立ちます。ある調査で、どんな言葉が好かれるのかという国際比較が行われました。夢、愛、希望などは、どこの国でも上位です。ところが、「権威」は、他の国では上位でも日本では順位が低くなりました。日本では、上の権威を尊重する気持ちが少なくなっているのかも知れません。
さらに、ネットコミュニケーションは、匿名の世界でもあることから、もともと上下関係などとても希薄な世界でした。さらに加えて、LINEは、気さくでかわいらしい世界ですね。
こういう現代日本人がそんなネット、LINEを使えば、上下関係が希薄になるのは当然です。ところが、ビジネスの世界は、それでもやはり上下関係の厳しい世界です。ということで、摩擦やらすれちがいやらが起きるのでしょう。
■新しい人間関係
「権威」を軽んじる人の中には、権威と「権力」(他人を強制し支配し服従させる力)を混同している人がいるのかもしれません。権威と聞くと嫌な感じがしても、オーソリティー(authority:権威、専門家)なら、良い感じを持つ人もいるかもしれません。
(「権威」を権力と同様の意味で使うこともありますが、分けて使えば、権威は「ある分野において優れたものとして信頼されていること」でしょう。)
古い言葉を持ち出せば、「親しき仲にも礼儀あり」でしょう。ただし、礼儀もマナーも、正解はなく変化することを、上司も部下も理解する必要があるでしょう。お互いに押しつけてはいけません。とくに新しい道具、ネット関係の道具に関するルールとマナーは、急激に変化していくでしょう。
自動車も電話も、ネットも、便利な道具ほど危険性も大きくなります。自動車のハンドルやアクセル、ブレーキを使えるということと、社会の中で安全で便利な自動車文化を創り上げることは、別です。
レースをすることと、高速道路を走ることと、住宅地を走るのは別です。
ビジネスメールのスタンダードが徐々にできて、メールがビジネスの世界で定着したように、LINEも定着するでしょうか。それともまた、新しい道具が出てくるでしょうか。
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