『アナと雪の女王』主題歌「レット・イット・ゴー:ありのままで」の歌詞を心理学で解説:その意味は?

■大ヒット『アナと雪の女王』と主題歌「レット・イット・ゴー:ありのままで」の歌詞

大ヒットしたディズニー映画『アナと雪の女王』。ついに、動員1000万人突破です(4/30)。

大ヒットの理由の一つは、すばらしい「アナと雪の女王」の主題歌「レット・イット・ゴー:ありのままで」でしょう。

劇中歌「Let It Go」を聴いたスタッフたちは、その曲のすばらしさに魅了され、当初は悪役的な存在だった姉のエルサを、もう一人の主人公に変えてしまった。クラシックな雰囲気を持ちながら、極めて現代的なストーリーになっているのもおそらくは、スタッフ間でそうとうな議論が重ねられた末の結果に違いない。

出典:『アナと雪の女王』はなぜ面白いのか ディズニーアニメを率いるジョン・ラセターの力 :東洋経済4/29

『アナと雪の女王』の主題歌「「レット・イット・ゴー」の曲と歌詞、この楽曲のすばらしさが、映画全体のストーリーやテーマにまで影響を与え、映画も曲も大ヒットしました。『アナと雪の女王』のテーマは、ありのままの自分を受け入れ、自分らしい自分となって自分の力を活用することです(『アナと雪の女王』の心理学:レリゴーと個性の本当の意味を読み解く)。

今回は、主題歌「レット・イット・ゴー:ありのままで」の歌詞を心理学的に味わいつつ、『アナと雪の女王』の魅力に迫ってみましょう。

(映像の解説はこちら:『アナと雪の女王』主題歌の感動を深める映像の意味を心理学で読み解く

このページでは、日本語版の歌詞を中心に、英語版の歌詞を参考にしながら考えます。日本語歌詞は、英語歌詞と同じではありませんが、歌と物語のメッセージをすばらしく表現していると思います。

■一緒に歌おう♪『アナと雪の女王』主題歌「Let It Go<歌詞付Ver.>」 (松たか子)

何度見ても(聞いても)、すばらしいですね。

■「真っ白な世界に一人の私」

歌は、静かに始まります。「♪真っ白な世界に一人の私」と。

『アナと雪の女王』主題歌「「レット・イット・ゴー」の歌詞の始まりは、降り始めた雪で足跡が消された山で、「真っ白な世界に一人の私」です。

雪だるま作ろう」のシーンに出てきますが、エルサは妹を傷つけてしまった後、部屋に閉じこもります。部屋の中は凍り付き、雪が降っている。その中で、一人絶望して座り込んでいるエルサが描かれます。

私たちも、自分を嫌い、自分の個性を封印し、孤独に震える時があります。まるで、吹雪の中、ひとりぼっちで歩いているように。

でもエルサは気づいています。歌詞にあるように「♪このままじゃだめなのだ」と。私たちも、そんな自分を嘆くことがあります。涙をながしたり、やけになって乱暴をするかもしれません。

でもその苦しみは、実は「このままではだめ」だと気づいている印なのです。

主題歌の歌詞にある「雪」「白」は、純粋さの象徴でもありますが、純粋だからこそ、人は深く傷つくのでしょう。

■「誰にも打ち明けずに」

エルサは、孤独に悩み続けていました。歌詞にあるように「♪誰にも打ち明けずに」悩んでいました。

私たちは、様々な苦しみに出会います。でも、最も辛い苦しみは「誰にも打ち明けられない」ことではないでしょうか。心理学の研究によれば、どんな悩みも、人に話すと深刻さが薄らぎます。

孤独にひとりぼっちで考え込んだりすると、ろくなことは考えません。深い悲しみも、共に悩み、共に泣いてくれる人がいれば、人はきっと乗り越えていけるでしょう。

エルサの秘密は、あまりにも深刻でした。エルサは、ひとりぼっちで悩み続けていました。でも、もうそんな悩み方をやめようと、エルサは決心します。

■「ありのままの姿見せるのよ」

自分自身を隠して生きてきたエルサは決断します。歌詞にあるように「♪ありのままの自分になる」と。

「ありのままの自分になる」とは、ありのままの自分を自分の心に肯定的に受容することです。でも「自己受容」なんていっても、よくわかりませんね。心と行動は、別々のものではありません。ありのままの自分になる、自分を受け入れるとは、ありのままの姿を見せることです。ありのままに、個性的に活動することです。

ありのままの私として、自分らしい自分として、人前でも、ありのままに行動することが、ありのままの私になることです。

■素直?ありのまま?

英語版「Let It Go」(の日本語訳)の歌詞では、「いつも素直な娘で」「感情を抑えて」と歌われています。

女性は、素直で、わがままを言わずにと、しばしば教育されます。それが間違っている訳ではありませんが、誤解されることはあると思います。ありのままの私を押さえ込み、感情を出さずに生きていくのが、「素直」ではありません。「素直」は、人の言うことを素直に聞く、盲従するのではなく、本来の「素直」は、自分のありのままの気持ちに素直に従うことだと思うのです。

子どものことの傷ついた心(インナーチャイルド)を持った人の中には、自信を失っている人がいます。ありのままの自分を隠し、必死になって周囲からの高評価を得続けようともがいている人もいます(もっともっと認めてほしい:承認と友だち選びの心理学)。

本当は、周囲からのいい加減な評価など、気にしなくてもいいのですが(大切な人から認められてさえいれば)。

■「風よふけ」「少しも寒くないわ」

ありのままで生きていこうと決心したエルサは、「♪風よふけ」と力強く歌います。人の言うことに従っているだけではなく、自分らしく生きていこうとすれば、当然困難はありす。でも、それは必要な困難です。

自信を取り戻し、自分の信念に基づいて行動しているとき、困難がくれば、さらにエネルギーが増しませんか? 難しい課題ほど、やる気が増しませんか?

風が吹いても、歌詞にあるように「少しも寒くないわ」ですね。

(日本語版の「♪少しも寒くないわ」のシーンは、英語版よりかっこいいと感じました。)

■「悩んでたことが嘘みたいね」

山から町を見下ろして、エルサは歌います「♪悩んでたことが嘘みたいね」。

英語版の歌詞では、「遠くから見ると、すべてが砂粒のよう」だと歌っています。

私たちは人生の中で傷つきます(人はみな傷ついた子ども時代の思いを心の中に持つ:インナーチャイルドの癒し)。

あなたは、あなたの個性を発揮して良いのですが、その個性のゆえに傷つくことがあります。からかわれたり、ばかにされたり、否定されることもあります。

『アナと雪の女王』の心理学:主題歌レリゴーと個性(ありのままの姿)の本当の意味

そのときは、とても傷つきます。でも今から思えば、小さなことです。訳のわからない乱暴で意地悪な子の言葉や評価など、今から思えば砂粒のようなものです。

そんな過去の縛りから自由になり、私は私の思うように、何でもできるようになるのです。人は、なりたい自分になれるのです。

■「自分を試したいの」:ありのままだからこそ

『アナと雪の女王』主題歌「レット・イット・ゴー」の歌詞にある「ありのまま」、そのままでいいとは、努力しなくて良いという意味ではありません。雪と氷を操れる力を持っているわけですが、その力がどれほどのものかは、まだわかりません。エルサは、次々と素晴らし力を発揮します。かわいらしい生きた雪だるまを作り、巨大な氷の城を作ります。

魔法だけではなく、自律した生活をエルサは目指すのでしょう。心が健康な人は、自分の能力を試したくなります。子どもが、高いところがあれば上りたがり、狭いところがあればくぐりたくなるように。

「ありのまま」と努力とは矛盾しないのです。

■「ありのままで 空へ風に乗って」

歌詞「♪ありのままで、空へ風に乗って」。

ありのままの私は、自由に広い世界で活動します。空は広い世界の象徴、風は自由の象徴でしょう。

■「花咲く氷の結晶のように」

歌詞「♪花咲く氷の結晶のように」。

結晶は美しくバランスが取れています。そして、結晶は徐々に少しずつ形作られてきます。結晶は、自分自身のあり方、自分の人生の象徴でしょう。

■「もう決めたの」

力強く歌われる歌詞「♪もう決めたの」。

エルサは、自分の生き方を自分で決めました。心理学でいえば、「自律性」を身につけたといえます。人生を決めるのは、環境でもなく、能力でもなく、自己決定です。

「人が何者であるかを決めるのは、能力ではなく選択なのだよ」(ハリーポッター、ダンブルドア校長)

■ありのままの「自分を好きになって」

人は、愛されるために生まれてきました。私たちは、みんなから愛され受け入れられている自分自身を愛し、好きになります。この主題歌の歌詞にあるように、ありのままで、「これでいいの」と自分の価値を信じます。

このような自尊感情(セルフ・エスティーム)が、心の健康の土台になります。自分を好きになる人が、自分の能力を発揮でき、人にも優しくできます。

自分の個性や能力が嫌いなら、その自分の力に磨きをかけようと思えないでしょう。自分は美人でないからダメ、成績優秀でないからダメと感じてしまうと、世界中の美人で成績優秀でない人を認められなくなります。美人で優秀な人を見ても、心からほめることができなくなります。

個性ある自分をありのままに好きになることで、それぞれに個性ある人々を愛することもできるようになるでしょう。

■「歩き出そう」「少しも寒くないわ」

人は、心で思っただけではなかなか変われません。大事なのは、行動です。一歩を踏み出す、歩き出すことで、変化が生まれます。歩き出すことで苦しみも生まれますけれど、もう孤独に震えていたときとは違います。

ありのままの自分の価値を信じ、行動を始めた人にとっては、歌詞にあるように「♪少しも寒くないわ」と力強く宣言できるのです。

■主題歌「レット・イット・ゴー:ありのままで」ふたたび:歌詞は同じでも

『アナと雪の女王』主題歌「レット・イット・ゴー」は、映画の中で2度登場します。一回目は、町を出て山に登り、氷のお城を作るとき。開放され、自己受容を達成したエルサが力強く歌う感動的なシーンです。

でも実は、このときの歌と、2回目にエンディングロールで流れる歌の意味、歌詞の意味が少し違うように、私には思えます。

最初エルサは、開放されましたが、まだ未熟でした。強くはなりましたが、まだ何かが足りませんでした。その結果、エルサの大きな力によって、王国は大変な危機に陥ります。

映画『アナと雪の女王』のテーマは、「自己受容」と、それから「自己制御」だと思います。大きな力は、大き災厄を生み出す可能性があります。力があるからこそ破滅するときもあります。

「この力をコントロールしなくては」とエルサも自覚していたのですが、最初は失敗します。「凍った世界を救うのは、真実の愛」です。不安や恐怖、孤独に打ち勝って自分をコントロールするには、愛の力が必要です。

エルサが自己受容と自己制御を身につけたあとに歌われる主題歌「レット・イット・ゴー:ありのままで」は、歌詞の一つ一つがさらに深い意味を持って、私たちの心に響くでしょう。

■予告編「凍った世界を救うのは、真実の愛」

■英語版『アナと雪の女王』主題歌「Let It Go」(日本語歌詞字幕つき)イディナ・メンゼル

今回の日本語版の歌詞はとても優れていますが、やはり映像と歌詞が一番良く合っているのは、英語版でしょう。エルサが床を強く踏み鳴らすシーンは、日本語歌詞では「二度と涙は 流さないわ」ですが、英語版の歌詞では、Here I stand, and here I'll stay. (自分の道を行く)。こちらの方が、映像に合っていますね。

英語版も日本語版もテーマは同じですが、日本語版にはやややさしさを感じ、英語版の方がより強さを感じます。

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『アナと雪の女王』の心理学:レリゴーと個性の本当の意味を読み解く

『アナと雪の女王』主題歌の感動を深める映像の意味を心理学で読み解く:レット・イット・ゴーありのままで

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あなたはなぜ「ありのまま」になれないのか

東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院博士後期課程修了。博士(心理学)。新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。スクールカウンセラー。テレビ新潟番組審議委員。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。HP『こころの散歩道』は総アクセス数5千万。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「とくダネ!」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ビートたけしのTVタックル」「ホンマでっか!?TV」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』など。監修:『よくわかる人間関係の心理学』など。

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